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スタッフインタビュー

目指すのは「考え、動く検査室」 誇りとこだわりを持ち、正確な検査結果を迅速に届けたい

検査・輸血部 臨床検査技師長

山内 恵

病気を診断し、治療方針を決める上で重要な判断材料の一つとなるのが「臨床検査」です。正確かつ迅速に検査結果を届けるとともに、安心して検査を受けられる空間をつくることも大切。――臨床検査技師長の山内恵さんはそう話します。世界水準の検査品質を維持・向上させるために日々どんな取り組みをしているのか、お話を伺いました。

検査・輸血部

好きなことを極めつつ、病める人の役に立ちたくて臨床検査の道へ

高校生のころ化学が好きで、化学式や化学反応、体の中の物質が変化する形・化学構造かを理解するのがとにかく楽かったのを覚えています。それと同時に、「病める人のためになる職業に就きたい」という漠然とした夢がありました。では、どんな職業なら自分の好きなことと合致するのかと考えたとき、行き着いたのが「臨床検査技師」でした。

大学院修了後は県内の研究機関で基礎研究に従事していました。研究は新たなことを探求する面白さとやりがいがありました。しかし、研究機関での仕事は、いつかは人の役に立つとはいえ、医療の場、患者さんとの距離があります。次第に「やはり臨床検査という医療の場に立ちたい」という気持ちが強くなり、臨床検査技師としてスタートすることになったのです。

当院は県内唯一の大学病院であるため、検査業務に加えて研究や教育に携わるチャンスもあり、幅広い視野と知識を培うことができます。私にとって絶好の条件がそろっていると考え、迷いなく手を挙げました。入職後は、生化学や免疫検査、凝固検査などの検体検査を中心に担当してきました。

正確な検査結果を、より速く届けることが私たちの使命

臨床検査といえば血液や尿検査のイメージが強いようですが、それだけではありません。臨床検査は大きく2つに分けられ、血液、や尿、便、痰、組織などを使った検体検査と、心電図や呼吸器検査、超音波検査などのように体に装置を当てたり装着したりして調べる生理機能検査があります。救急や入院の患者に必要な検査は365日、24時間体制で行っています。

臨床検査の結果は病気の診断、治療方針の決定、治療効果の判定など多くの場面で利用され、診療に欠かせないものです。そこで私たちの最大の任務となるのが、検査結果を正確に可能な限り速く届けることです。病気や症状の原因を明らかにしなければ、適切な治療ができません。それが早く判明することで早く治療を始めることができます。そのために、臨床検査のより早い結果報告が求められます。

臨床検査においてもミスは厳禁です。ミスを防ぐには、集中力に加え確認作業を確認を怠らないことも必須です。忙しいとき、焦っているときほど丁寧にと自分自身にもスタッフにも言っています。人は誰でもミスを起こす可能性があることを常に頭に置き、一つひとつ丁寧に進めるという基本を忘れないようにしています。

目指すのは、患者さんの立場に立って考え、動く検査室

臨床検査技師のことをよく知らない方もおり、他の医療職種と比べると認知度が低いと感じます。採血をしていると「看護師さんありがとう」と言われることがあります。とっさに「私は臨床検査技師なんですよ。ここでは看護師さんと一緒に頑張っています。採血した血液は私たちが丁寧に検査しますね」と伝えることも。

私は、臨床検査技師が検査結果を医師に届けるだけの縁の下の力持ちのような仕事とは思っていません。私たちも患者さんの命を守り、医療を支える重要な職種だと考えています。検査結果を最初に目にするのは臨床検査技師です。気になることがあれば医師に直接電話で伝え、時に助言や提案をすることもあります。

例えば、当初は血液疾患の疑いがなかった患者さんの検査で、白血球の数値がかなり高く、異常な細胞が顕微鏡で確認されたことがありました。担当技師は「白血病の疑いがある。○○検査を追加してはどうか?」と医師に連絡。その患者さんは最終的に白血病と診断されたという事例があります。これはほんの一例で、各検査担当の技師が日常的にこのように動いています。臨床検査に誇りとこだわりを持ち、何か疑問に感じたら自ら考え、一歩踏み出して対応する。そんな検査技師、検査室でありたいですね。

国際的にも通用する検査室として、精度の保証された質の高い検査を提供

当院は2017年に臨床検査の国際基準ISO15189の認定を取得しました。技師長1年目での最初の大きな仕事でした。県内でISO15189の認定・維持しているのは当院が唯一で、この認定を持つことで国際的な治験にも参画することができます。

当院は県内唯一の特定機能病院であり、県内の医療における最後の砦ともなります。高度な医療を提供する以上、それに対応する検査も必要で、臨床検査技師にも相応のスキルが求められます。精密な検査機器への対応力、顕微鏡や超音波装置などを駆使した高いレベルの観察力、洞察力も必要です。医師に結果をつなぐための適正な判断力も不可欠です。現在、検査・輸血部、病理部、超音波センターを併せて43名の臨床検査技師が約300項目、年間約320万件の検査を行っています。勉強熱心で高い能力を持つ技師が揃い、専門技師の認定取得、学会発表、学生教育などにも積極的に取り組んでいます。

また、当院で得られた知識や技術を他施設と共有すること、地域の中核病院として牽引することも私たちの重要な役割です。検査技師会の学術委員として参画するスタッフも多く、地域の施設と一丸となってともにレベルアップしていきたいと思っています。

検査室がフル稼働したコロナ禍は、スタッフ一丸となって奮闘

臨床検査は体内で起きている見えない変化を、血液や細胞などの状態、もしくは体が発する情報から探るという専門性の高い分野です。検査結果の変化から患者さんが回復に向かう様子が伺い知れたときは、本当に嬉しくて手応えとやりがいを感じます。

しかし、2020年から約3年間、新型コロナウイルス感染症の蔓延時期は大きな苦難に立ち向かうことになりました。未知のウイルスとの闘いが始まり、当初は1日10名、20名の検査しかできない状況でした。それが、1日200件、300件の検査を可能にすることもありました。ウイルス感染を判断するのは検査しかありません。とにかく検査を、より多くの人に検査を、そして可能な限り早く結果を、24時間いつでも検査を、と求められる検査体制が次々と変化し、それに応じるように努力していきました。

コロナ検査とそれ以外の検査、どちらも止められないときにスタッフの感染や濃厚接触で人手が不足することもあり、現場の指揮は困難を極めました。他の診療科スタッフはさらに困難な状況にあるだろう、「検査」でその状況が幾分か軽減できるのでは、と考え、検査スタッフ全員一丸となってできる限りのことを続けました。この先、どんな事態が起こるか分かりません。この経験を活かして柔軟に対応していけたらと思っています。

誰に対しても、礼節を持って関わり合う職場風土をつくりたい

採血しかり、検査を受ける患者さんには不安や恐怖がつきものです。ほんの数分であっても、少しでも緊張が緩み、安心してほしいものです。そう思って始めたのが検査部内での接遇研修です。実践形式で声かけや表情、態度などを一から見直し、日常業務の中で自然に活かせるよう取り組んでいます。

接遇は患者さんだけでなく部内のスタッフ間でも、さらには他職種とのコミュニケーションにも大きく関わってきます。私たちは検査の専門家としてさまざまな職種と協働しており、コミュニケーションが欠かせません。良いコミュニケーションの輪は、他職種の専門性を認め尊重し合うことから広がってきます。困ったときは助け合い、互いの足りない部分を補完することも連携の醍醐味で、これにより私たちもさらに幅広い知識、視野、経験を積むことができると考えています。誰に対しても礼節を忘れず、互いの強みを認め、高め合う存在でありたいですね。

今度は後輩のサポート役として職場に恩返しする番

私は資格を持っていたものの、検査技師としてスタートしたときは少し年齢が進んでいました。家庭・子育てもあり、現場経験はゼロで当院に入職したのです。ですから少しでも早く一人前になりたくて、産後はどの子も5~6ヵ月で職場復帰に挑みました。急な発熱などで早退せざるを得ないことも多々あり、早朝に機器をセットアップして病児保育に預けた後に出勤したこともありました。育児を理由に「できない」を増やすことを避けたい、だからできるときは目一杯の気持ちでいました。職場ではオンで集中、子どもが元気にしている間の仕事時間は学びを増やすチャンスで、オフは家のことに集中する。時間の制約があったからこそ、時間の使い分けを意識できたのかもしれません。

振り返ると多くの人に助けられながら仕事と子育てを両立してきました。「持ちつ持たれつ」、お互い様の気持ちで、育児が一段落した時期からは私が助ける番だと思っています。人手が足りないときの応援業務をしたり、時には家庭や育児との両立に奮闘するスタッフの話に耳を傾けたりと、頑張っている人の背中を押すという形で恩返ししています。

検査技師は患者さんの命に向き合う、素晴らしい仕事

当院は大学病院であり、教育も担う病院です。私を含め多くのスタッフが大学で講義をしたり、病院実習にくる学生さんに指導したりしています。臨床検査技師を目指す学生さんに伝えたいのは、この仕事は患者さんの命に向き合う、日々やりがいを感じられる仕事だということ。何かを追究したり観察したりすることが好きな人、チームプレイができる人は臨床検査技師に向いているのではないでしょうか。

臨床検査技師には膨大な知識や技術が必要とされます。さらに深い知識と技術を修得すれば、認定資格という形で評価されます。それにより周りからの信頼が高まることは勿論、何よりも自分の自信となり、さらなるやりがいとなります。

無駄がなく、なおかつ患者さんに安心して検査を受けてもらえる空間を整備

琉球大学病院は2025年1月に移転・開院を迎えました。それに伴ってよりスピーディーに、より正確な検査結果が報告できるように検査環境を整えました。患者さんが安心して検査を受けられるようにレイアウトも工夫しました。検査エリアの効率化を図り、人、物、時間に無駄のない検査室を目指しています。

また、日本国内では自然災害が相次いで発生しているため、いつ起こるか分からない有事に備え、非常事態下の検査体制も整えていかなければなりません。大学病院にいる私たちは何をすべきか、何ができるかを精査し、有事の状況下で的確に動くことのできる姿勢、体制を強化していきたいと考えています。

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