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2024年 病院長年頭挨拶


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 明けましておめでとうございます。恒例の病院長の年頭のご挨拶を申し上げます。コロナ感染が少し落ち着き、病院も徐々に平常状態を取り戻しているところです。今年一年、沖縄県内唯一の特定機能病院として、その役割を果たすこと、また、ちょうど1年後に迫った西普天間への移転を成功裏に進めるために、職員一同、気を引き締めて対応をしていきたいと考えております。

 さて、毎年のことではございますが、新年のスタートに際して琉大病院の理念を述べさせていただきます。本院の理念は、「病める人の立場に立った、質の高い医療を提供するとともに、地域・社会に貢献する優れた医療人を育成する。」です。職員それぞれが医療職として役割を担って仕事をしておりますが、自ら行動するのみならず、病院組織全体のレベルアップも考え、この理念を実現するために力を合わせています。また本院は、人材育成により、地域医療、先進医療、国際貢献などの実現が求められています。病院長として、職員が働きやすくやりがいのある職場を作っていきたいと考えております。

 それでは、令和5年を振り返りながら、令和6年のことについて述べたいと思います。まず、病院の状況ですが、コロナ渦から回復中とはいえ、入院患者数、病棟稼働率、手術件数、収益など、以前の状態には戻っておりません。以前の状態に早めに戻していきたいと思いますが、そのためにはコロナで疲弊した職員のモチベーションアップの取り組みが必要であると考えています。

 次に、病院機能評価受審とその後の病院の質の改善に関連する事柄について述べさせていただきます。本院は受審を通じて、どのような病院を目指し、それを実現するために何をすべきかを学ぶことができました。この学びを病院文化として次の世代に伝えつつ、継続させ、さらに発展させることが必要です。医療安全、患者安全の取り組み推進は、特定機能病院に欠かすことができない活動です。また、安全管理体制に対する外部評価では、市民の方から、『琉大病院の安全への取り組みは評価できるため、社会へ向けてもっと発信したほうがよいのではないか』とのご意見もいただいておりますので、発信力の強化を検討したいと考えております。

 また、これまでにも増して、チーム医療が広がってきました。特定行為看護師研修も進み、医療技術部が設置され、さまざまな医療職におけるプロフェッショナルとしての基盤ができています。それぞれのスタッフが病院の中でチーム医療の一旦を担い、存分に力を発揮していただき、医療における存在感を示していただければ幸いです。

 特定機能病院として、また、沖縄の医療の最後の砦として、病院の機能向上に関連して実現したうち、いくつかの事例を挙げさせていただきます。各科診療機能の充実と高度化、生体肝移植件数増加、膵臓移植施設認定、腎移植件数増加、AYA世代への妊孕性温存療法の提供、経カテーテル治療の充実(TAVI専門施設認定、MitraClip治療、など)、ロボット手術の適応の拡大や従来の適応での件数の増加、国際医療支援室の活動の拡大、海軍病院との連携(患者受け入れ、災害訓練など)、救急部の対応強化、みらいバンク始動、虚血肢再生医療研究開始、スポーツ医療開始などです。もちろん、このほかにも多くのことが実現しています。

 他にも明るい話題をいくつかご紹介します。まずは、昨年に引き続き、文部科学省から人材育成に係る補助金を獲得することができました。昨年は、地域医療教育の充実でしたが、今年は、臨床研究体制の充実や、薬物処方のトレーニングプログラム開発するための補助金となり、これまでの実績が認められた結果だと考えております。また、整形外科のスポーツ医療のグループが取り組んでいたクラウドファンディングも目標額を達成することができました。職員はもちろん、チームドクターをしている琉球ゴールデンキングスの選手の皆さんのご協力も大きかったと思います。今後、衝撃波でスポーツ障害を治療する機器を購入予定です。また、これまで病院で取り組んでいたQCサークル活動が、第6510回QCサークル全国大会(宜野湾市)において、2チーム入賞しました。シミュレーションセンターで練習をしていた医学生たちが、日本救急学会が行っている第9回全国医学生BLS選手権大会にてチーム優勝したこともめでたいことです。これは2016年に医学教育学会が行っていたシムリンピックで医学生が優勝したことに次ぐ快挙となります。シミュレーション教育が、琉球大学医学部や病院で根付いている証拠だと考えております。

 また、琉球大学が全学を挙げて力を入れているDXにも力を入れています。先日、優れた取り組みに対してRX(琉球大学のDX)学長賞が授与されましたが、4つの学長賞うち、2つを本院(がんセンターや看護部)が獲得しました。また、大学本部の事務職員が獲得した賞も、医師の外勤管理をするための仕組みがベースとなっていますので、RX学長賞の大半を病院が獲得したと言っても過言ではありません。

 西普天間への移転についてですが、病院の患者輸送は令和7年1月4日、病院の開院は1月6日を予定しています。令和3年に始まった病院棟の建築も、昨年12月末時点で90%を超え順調に進んでいます。物価高騰の影響もございましたが、さまざまな関係者のご尽力により、何とか必要な予算を確保することができています。

 さて、令和6年の取り組み内容をリストアップしますと、第4期中期目標・中期計画の遂行、ポストコロナでの安定した病院運営と経営(職員の確保と育成、医療安全の推進、経営対策、電気代やガス代高騰への対策など)、医師の働き方改革をさらに推進(勤怠管理システムの導入、タスクシフト、全科当直からオンコール体制への移行、医師以外の職種へも働き方改革の取り組みを広げる)、さらなる経営改善のための取り組み(経営の見える化)、病院の質の向上への取り組み(理念の共有、QCサークル活動など)、病院の企画・広報の充実、看護師特定行為研修のさらなる発展と実務参加の推進パッケージなど、病院の質の持続的な向上(医療の質の向上、医療安全の促進など)、着実な病院移転の準備などが挙げられます。中でも、医師の働き方改革はもっとも重要な課題であると考えています。働き過ぎから守ると同時に、それぞれの仕事の質を上げ、働きがいを高めることが重要であると考えています。それには、職員のみならず患者の皆さまも含めた一人一人のご理解とご協力が必要となります。

 最後に、私は、琉大病院が職員の一人一人が“成長する”場として存在することを望んでいます。組織と構成員が成長するためには、構成員による「エンゲージメント」の醸成が必要とされています。個人の成長や働きがいを高めることが組織価値を高めることに繋がりますし、逆に、組織の成長が個人の成長や働きがいを高めることにもなります。職員一人一人が主役です。患者の皆さまには元より、職員にとっても良い病院でありたいと考えております。今年も一緒に良い病院を作っていきましょう。どうぞ宜しくお願いします。

琉球大学病院長
大屋 祐輔