琉球大学大学院医学研究科 胸部心臓血管外科学講座(琉球大学病院 第二外科)

アクセス
〒903-0215 沖縄県中頭郡西原町字上原207番地
Cardiovascular surgery

末梢血管外科
動脈、静脈およびリンパ管における疾患を診療します

末梢血管グループの状況報告

  コロナ禍のもと、各病院とも診療制限や症例数の減少など諸所課題はあると思われますが、同門の先生方をはじめ、各先生方、医療スタッフのご健勝をまずお祈り申し上げます。
近況を含め、2021年の当科末梢血管グループの状況報告を行います。

末梢血管外科は、火・金曜日に外来診療を行っており、待ち時間短縮、病状把握のために形式上、完全予約制となっております。患者枠(数)は、定期&院外紹介患者(12)、院内紹介(4)、シャント関連紹介(4) となっております。当日の受付・コンサルトでも診察・検査を行っておりますのでご紹介いただければと思います。
また、大動脈瘤に対する血管内治療においては大動脈ステント治療を5年前より開始し年間80例以上の手術を行っており、ほか開心術における低侵襲心臓治療Minimally Invasive Cardiac Surgery (MICS)と併せて、治療の低侵襲化を推し進め、患者様の負担軽減に大きく寄与しています。
その他、難病疾患(特定疾患)に指定されているBudd-Chiari(バッドキアリ)症候群に関して全国より紹介された患者様の手術治療(直達手術)を行い、長期遠隔期成績も含め良好な成績を治めています。
院内からのDVT精査でエコー検査目的の紹介も多く、術前のエコー検査も含めると2021年に血管外科医で行ったエコー検査件数は508件でした。内訳としては以下の通りでした。
(シャント関連210件、DVT精査211件、下肢静脈瘤44件、下肢動脈28件、その他15件)

下肢静脈エコー検査の依頼は、普段の診療を圧迫しておりますが、医療スタッフの協力(助け)があり、 医師のタスクシフト(負担軽減)は徐々に進んでおります。去年入職したエコー検査技師(即戦力の方)がおり、検査室の協力もあって、2022年5月から、毎週月曜日に検査枠4で検査技師による下肢静脈エコー検査が実施できるようになりました。今後は水曜日、木曜日と徐々に検査枠を開設していただき、病院診療日には毎日、エコー検査ができるような体制となれば、他科の診療の助けにもなると確信しております。また、血管外科の普段の診療、処置、手術・血管内治療の際には、当科スタッフ、コメディカルスタッフの皆さんにいつも助けて頂いており、この場を借りて感謝の意を表します。

 2021年10月から上門あきの先生が牧港中央病院へ異動となり、戦力は半減しましたが、スタッフの皆さんに支えられ、なんとか診療が継続できております。朝カンファで、手術・血管内治療前後のプレゼンを行い、入院患者の病状報告・情報共有を行っております。
その中、初期研修医、当科研修医、第1外科の外科修練医の先生方が血管Gへローテーションとなり、一緒に診療や手術治療を行いました。<当院初期研修医1年目の 今田早香(10月)、宮里卓行(12月)、2年目の仲山由季(11月)、後期研修医の當山昌大(11-12月)、 外科修練医の新垣慎太朗(12月)、石嶺伝羽(2022年1月)>

 院内の手術件数や血管内治療の状況は別表に示しておりますが以下の通りでした。
 下肢動脈バイパスは、6件、内膜摘除術12件、EVT(血管内治療)10件、下肢静脈瘤手術は、11件(EVLA 10肢、stripping 1件)でした。シャント関連手術は93件で、シャントPTA55件、AVF作製36件、AVG作製2件、その他(表在化、血栓除去+PTAなど)10件でした。

 院外での外来診療としては、木曜日には隔週で南部徳洲会病院、沖縄第一病院、第2,4金曜日には浦添総合病院、毎週土曜日にはハートライフ病院で血管外科診療を行い、症例を紹介頂いております。その他、同門の先生方や当科医師の外来診療先病院からの患者紹介もあり、症例の紹介には感謝しております。
 院外への手術応援は、手術応援60件ありました。内訳としては、下肢動脈関連5件、シャント作製5件、シャントPTA46件、下肢静脈瘤1件、シャント血栓除去+バイパス1件、シャント瘤1件、動静脈瘻切除1件でした。(沖縄第一病院、浦添総合病院、沖縄赤十字病院、南部徳洲会病院、中部徳洲会病院)

 手術以外のこととしては、4月には弾性ストッキキング・圧迫療法コンダクター WEB講習会に外来ナースと共に参加し、慢性静脈不全に対する静脈圧迫処置が診療報酬として算定できるようになりました。6月にNSTのWEB講習会を受講し、毎週水曜日のNSTカンファで入院患者さんの栄養状態と食事療法について、 病棟スタッフ(看護師)、栄養士、薬剤師などと協議しております。また、血管関連の学会もWEBで併開さ れており(WEB受講できるため)、極力、各学会や研究会に参加し、情報収集を行っております。

また、特記すべきは、現在、重症虚血肢に対する血行再建が困難な症例に対しての付加的治療として他家脂肪幹細胞移植の医師主導型治験が走っており、2022年3月当院の倫理審査委員会の承認が通り、現在は適応症例を検討中です。また、臨床薬理学教室のスタッフの協力を得て、沖縄県の主要な病院で協力可能な病院へ声掛けし、沖縄県における重症虚血肢の予後の調査を行う治験の準備を行っているところです。症例がありましたら、ご紹介のほどよろしくお願いいたします。