琉球大学大学院医学研究科 胸部心臓血管外科学講座(琉球大学病院 第二外科)

アクセス
〒903-0215 沖縄県中頭郡西原町字上原207番地
Cardiovascular surgery

心臓血管外科
心臓と血管の外科的治療(手術)を担当します

離島で成り立つ沖縄県に 医療格差を作らぬよう

 琉球大学胸部心臓血管外科学講座では、心臓血管外科領域の手術を年間300例ほど行っており、標準的な心臓血管外科手術として心臓弁膜症に対する弁形成術、弁置換術、冠動脈疾患に対する冠動脈バイパス手術、胸部~腹部大動瘤に対する大動脈瘤手術(人工血管置換術)、閉塞性動脈硬化症に対する血行再建術を行っています。
 教室の基本方針として140の離島を有する沖縄県で「専門分野において、他都道府県と比較して医療格差を作らないように!!」を大きなスローガン、目標とし、本邦における高度先進医療を積極的に導入しています。その成果として、拡張型心筋症をはじめとした末期心不全症例に対する植え込み型補助人工心臓の施設認定、実施者認定を受け、本県における当該患者様への大きな福音となっております。

 また、大動脈瘤に対する血管内治療においては大動脈ステント治療を5年前より開始し年間80例以上の手術を行っており、ほか開心術における低侵襲心臓治療Minimally Invasive Cardiac Surgery (MICS)と併せて、治療の低侵襲化を推し進め、患者様の負担軽減に大きく寄与しています。

 その他、難病疾患(特定疾患)に指定されているBudd-Chiari(バッドキアリ)症候群に関して全国より紹介された患者様の手術治療(直達手術)を行い、長期遠隔期成績も含め良好な成績を治めています。

重症心不全に対する植込み型補助人工心臓治療

1) 心不全とは

 心臓は全身・肺に血液を送るポンプとしての機能を持ち、休むことなく働いています。
そのポンプとしての機能が悪くなる状態を”心不全”と呼びます。呼吸困難やむくみといった症状や、腎臓や肝臓などの臓器障害を来します。

2) 重症心不全に対する補助人工心臓治療

 最大限の内科的、外科的治療を行っても心不全症状が改善しない重症(末期)心不全に対しては、心臓移植が唯一根本的な治療となります。しかしながら、日本では極端なドナー不足のため、心臓移植登録を行ってから心臓移植を受けるまで 3-4 年の待機期間があります。そのため入院が長期になり、残念ながら待機期間中に亡くなる方もいます。そこで、心臓移植までのブリッジ治療として補助人工心臓治療、特に植込み型補助人工心臓治療が発展しています。

3) 補助人工心臓とは

 人工心臓治療の目的は、機能不全に陥った心臓のポンプ機能を機械的に代行させるものです。人工心臓開発の発端は、米国の心不全による死亡率の高さによるもので、1964 年に人工心臓プログラムが発足しました。人工心臓には次の 2 つがありますが、現時点では補助人工心臓が主流です。

(1)完全置換型人工心臓(心臓を取り除き 2 つの血液ポンプに置換)
   →技術的に困難
(2)補助人工心臓(自己の心臓はそのまま、左心室から大動脈へ血液を機械的に送る)
   ⇒現在の主流

 補助人工心臓は体外型と植込み型に分類されます。植込み型補助人工心臓は小型で体内に血液ポンプを植え込むため、外出や外泊、さらに患者の状態によっては外来通院可能です。

4) 琉球大学の取り組み

 琉球大学では、2011 年から心臓移植施設である東京大学と連携し、その治療の準備を進めてきました。
 2013 年 6 月に県内初の植込み型補助人工心臓手術を行い、これまでに 17 手術を行ってきました。心臓移植までの待機期間は補助人工心臓装着し外来通院します。なかには仕事をしながら外来通院している方もいます。実際の心臓移植は東大病院で受けてもらい、安定したら沖縄に戻ります。これまで 4 人の方が心臓移植まで到達し、現在この沖縄で元気に社会復帰しています。
 ただ、心臓移植を受けるためには心臓移植施設である東大病院にお願いするため、移植前後約 12 か月間、本人および家族は東大周辺で生活することとなります。沖縄県民にとっては、東京での生活費および東京までの往復の旅費が負担となっています。
 そこで我々は、心臓移植の患者と家族を支援するため”芭蕉の会”を発足し、募金による基金化を目指してきました。おかげさまで、多くの県民の皆様より多大な募金をいただき、実際に経済的支援することができるようになりました。

 現在、琉球大学では 7 人の方が植込み型補助人工心臓装着にて心臓移植待機中です。
沖縄県では年間 1-2 人が植込み型補助人工心臓治療を必要としており、その分心臓移植が増えることが予想されます。
移植施設として、今後は九州大学病院とも連携する予定です。経済的そして地理的な面でも負担が軽減できると考えています。