病理診断科の役割と沖縄県連携病理診断センターの発足

病理診断科医師 青山  肇
 患者さんと直接顔を合わせることはありませんが、各診療科を横断的に網羅する診断を支援しているのが病理医です。病理診断は、検査や手術で採取された組織を肉眼や顕微鏡で観察し、病因の解明などにつなげるのが目的で、特にがん診療ではその診断を確定する責務を負っています。琉球大学医学部附属病院病理診断科では、大学だけでなく県内の他の医療機関も支援しています。
 がんの手術ではしばしば、手術中に組織を顕微鏡で確認することで術式が変更になります。乳がんのリンパ節転移の確認や、卵巣腫瘍の良悪判定などがその例です。またがんが取り切れたかどうか、切除断端の判定が必要なことも多いです。これを術中迅速病理診断といい、琉大病院病理診断科では県立の宮古病院や八重山病院といった離島だけでなく、常勤病理医が不在の本島内医療機関にも、光回線を使った遠隔診断を行っています。顕微鏡に接続されたデジタルカメラやプレパラートのデジタルスキャナーを用いることで、実際にその施設で診断するのと変わらない精度で診断することができます。
 近年は遺伝子変異などの研究から、がん治療での標的遺伝子治療薬が多数認可されてきていますが、それらの多くは通常の病理診断とともに遺伝子などの特殊な病理診断が必要となります。本年度から病理診断科を主体に沖縄県連携病理診断センターが発足しました。このセンターでは遺伝子診断や病理標本をデジタル化する技術を駆使した診断を積極的に進め、地域完結型のがん診療をサポートしていく予定です。
 全国的にはがんのセカンドオピニオン外来を担っている病理診断科も多く、今後は患者さんと直接接する機会も増してくると思われます。がん診療連携拠点病院の病理診断科として、県内のがん診療向上に尽力していきます。
インターネットを介した遠隔術中迅速病理診断の様子

インターネットを介した遠隔術中迅速病理診断の様子