琉球大学医学部附属病院 副病院長・脳神経外科長
琉球大学医学部附属病院院長
琉球大学大学院医学研究科
胸部心臓血管外科学講座教授

國吉 幸男

特集:病院新体制

沖縄県民の健康公開講座

 医療機関の役割の一つに地域への医療広報活動があります。特に、大学附
属病院は特定機能病院として行っている様々な高度医療の内容を、広く地域
の皆様へ伝える必要があります。

一般の方々にとってこのような情報はHPでもある程度入手可能でありますが、なかなかかゆいところに手が届く程の説明内容ではないのが現状であります。以上のことを鑑み、沖縄県民の健康公開講座と称して、昨年7月から沖縄県立博物館・美術館で定期的に健康公開講座を開催しています。日曜日の午後、3時間程度の講演を行って、琉大病院で実際に行われている高度専門医療を中心に講演を行っています。
 昨年11月で5回が開催されました。第1回の担当科は眼科で、「見てわかる眼科診療−新しい検査機器・新しい手術−」、第2回が整形外科で、「ロコモティブシンドロームと健康長寿−チャ−ガンジューおきなわ−」、第3回が精神科神経科で「多様なうつ病に対する琉大での取り組み」、第4回が耳鼻咽喉科の「耳鼻咽喉科の最新治療」と題して行われ、第5回は、私の所属する第二外科(心臓血管外科)で「心臓血管外科治療の最前線」と題して公開講座が開催されました。会場は沖縄県立博物館・美術館内のホールで、160名ほどの聴衆が参加され、会場はほぼ満席状態でありました。3名の講師により各講師の担当専門分野について講演してもらいました。それぞれのタイトルも、一般向けにわかりやすく、1)体にやさしい心臓手術(MICS)とは、2)ここまできた人工心臓治療“携帯できる人工心臓”、3)大動脈瘤に対する血管内治療・手術、
でありました。対象を一般人と仮定して、講演内容も専門用語を出来るだけ使用せず、平易な言葉を
使用して行いました。講演の最後に参加者からの質問コーナーを設け、各講演者が壇上でそれぞれの
質問に答えるという形式で会は進行しましたが、その質問内容がかなりの専門性を含んでおり、参加
者の多くが患者ご自身ないし関係者で、現時点で悩んでいることを相談する内容であることが判明し
ました。
 初代六川二郎 教授第2代吉井與志彦 教授医療機関の社会に果たす役割は、受動的に患者さんを受け入れ診療を行うことも一つの方法論です
が、一方では、より積極的に医療について広報をおこない、より多くの方が現在の医療の恩恵に浴することが出来るようにすることも、また是認されるのではないかと考えています。特に、医療に関する情報が氾濫し、その真贋判定に戸惑っている現代社会において、本会のように身近な医療機関の医療者から平易な言葉で説明を受ける講演会は大いに意義のあるものではないかと考えています。本公開講座は、今後継続していく予定です。患者皆さんはじめ多くの方が参加し、琉大病院における高度先進医療に関する知識を得て、その恩恵に浴せるようになることを期待しております。