特集1 手術部ハイブリッド手術室の活用により、沖縄県の医療に貢献します 金谷 文則 手術部長・整形外科長

 ハイブリッド(hybrid)とは、1つの目的を達成するために2つ(またはそれ以上)の異質のものを組み合わせることであり、最近ではトヨタのプリウスなどの動力源として、ガソリンエンジンとモーターを持つハイブリッドカーで耳に馴染んでいると思います。

 ハイブリッド手術室(以下、ハイブリッドOR)は、据え置き型血管(angio)造影装置を設置した手術室であり、 当院では9月30日に沖縄県初のハイブリッドORのプレート上掲式が行われ、10月2日から運用が開始されました(写真1)。すなわち手術室で連続血管造影が可能になり、さらに画像の三次元構成も可能になりました。このハ イブリッドORはステント留置や血管内治療(経カテーテル大動脈弁置換)などに最も威力を発揮します。大きなメリットは、血管内治療中でも直ぐに開胸・開腹・開頭手術へ移行できることであり、緊急事態にも対処できます。
脳外科の動静脈奇形(AVM)の治療にも威力を発揮します。主な仕様はアーム支持装置:Artis Q TA、デジタル画 像処理装置3D画像再構成用ワークステーション(シーメンス社)、手術用テーブル:MAGNAS(マッケ社)であり、血管造影装置と手術用テーブルとのインテグレーションにより、放射線部の血管造影装置と同程度の操作性とともに非接触性安全機構により安全性を確保しています(写真2)。このシステムにより、スタッフや装置・器具を一箇所に集約できるため、コンパクトなスぺースで効率的な運営が可能になりました。

材料部の職員構成と医療器材の搬送

さらに、術中に3D画像(コーンビームCT)が撮影可能であり、得られた3D画像を用いたナビゲーションを用いて低侵襲手術に応用することも可能です。今まで胸腔鏡下手術(VATS)を行う際に、術前CT下マーキングが必 要であった肺腫瘍もDyna CTを用いた透視下ガイド(iGuide)により術中マーキングが可能になり、低侵襲かつ合併症を減らすことができます。必要な際には直ちに開胸手術に移行できることも大きなメリットです。バイオプシーやドレナージも術中CTにより確実に行うことが可能ですし、術前のCT、MRI画像によるシミュレーション を術中のCT画像に重ねることにより補正でき、より正確な手術が可能になります。整形外科(椎弓根スクリュー、椎体形成術)や顎顔面手術にも有用です。

ハイブリッドORのメリットは上記の通りですが、汎用手術テーブルを導入したことにより、一般の手術に用いることができます。9室稼働していた手術室は、今回のハイブリッドORの導入により10室となりました。現在の外科系の手術待ちは2ー3ヵ月に及んでいますので、手術室増により待機期間短縮が期待できます。

ハイブリッドORの設置により、高度な先進的手技を低侵襲でより安全に行うことが可能になりました。一方、その運営にはORスタッフはもちろん、診療放射線技師、臨床工学技士の協力が不可欠です。このハイブリッドORの活用により沖縄県の医療に大きく貢献できると考えています。