琉球大学医学部附属病院長 第二外科長 國吉 幸男
琉球大学医学部附属病院長
第二外科長

國吉 幸男

第二外科開講 30 年間の歴史

地上戦があった沖縄県は終戦直後の医師数が約60名であり、その医療環境は惨憺たるものであったと沖縄県医師会史に綴られています。そのため、復帰前は多くの患者さんが治療のため本土へ苦労して渡ったと伝え聞いています。1965年8月、当時の佐藤栄作首相は沖縄を訪問し、琉球大学に医学部設置を明言します。

1979年、沖縄県民の悲願、また最後の国立大学医学部として琉球大学医学部が発足いたしました。その4年後、1983年4月1日、我が第二外科は開講いたしました。昨年4月1日で丁度30周年になりました。

初代草場昭教授が赴任され、爾来2代目古謝景春教授、3代目現教授國吉幸男と続き30年が経過いたしました。当科は、一貫して、循環器外科すなわち心臓外科、血管外科、それに呼吸器外科を加えた領域を専門として外科治療を行ってまいりました。初代草場教授は本邦の血管外科の草分け的存在であり、既に多くの末梢血管の外科治療に関する研究業績を積んでおりました。末梢血管手術後の再閉塞を予測するタイプ分類は今日でも標準的であり、確実な血行再建を目指してその分野の発展に大きく寄与されました。

2代目古謝教授は、主として心臓、大血管の治療に情熱を注がれました。
特に、沖縄県で多発するバッドキアリ症候群に関する外科治療法の確立は、米国の教科書にも標準的外科治療として記載されています。また、現在でも難治である、胸腹部大動脈瘤に対する挑戦は、パイオニアの一人として常に文献引用されています。

  • 初代 草場 昭 教授初代 草場 昭 教授
  • 第2代 古謝景春 教授第2代 古謝景春 教授

現教授は、前任2人の薫陶を受けて心臓血管外科学を中心として診療、研究を行っています。「心臓血管外科領域において、本土に行く必要のない高度専門医療の推進」を我が教室是として、教室員共々日々の診療を行っています。5年前から行っている大動脈瘤に対するステントグラフト治療は、極めて手術侵襲が小さく、高齢者や他多くの併存疾患 を有する患者さんにとって、大きな福音となっています。この治療が、経カテーテル的大動脈弁置換術へと進化しています。また、今年度から導入施行している、心臓移植までの待機として行っている植え込み型補助人工心臓治療は、本学を含めて全国27施設での認定医療であり、沖縄県における心臓移植を要する重症心不全治療の大きな一歩となっていると考えます。

当科の強みは、上記30年間の長きにわたり継続して心臓血管外科の臨床・研究に取り組み、その臨床的経験が代々に渡って継承・蓄積されてきたことであると考えます。バッドキアリ症候群に対する外科治療も同様に継続・継承して行われており、当該患者が本土各地から治療を受けに訪れており、隔世の感を禁じ得ません。30年前、8名でスタートした当科は、現在までに100名に達する医師が入局し、県下の医療機関で活躍しています。初代教授から受け継がれた「目の前の患者の治療を最優先に」という現場主義を今後も貫き、沖縄県の地域医療に少しでも貢献していきたいと考えています。