琉大病院 『経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)専門施設認定』報告 第二外科 診療講師 永野貴昭
図1:TAVI専門施設認定書
図1:TAVI専門施設認定書

 大動脈弁狭窄症(AS)は大動脈弁の開放が制限される病態で、原因は、主に加齢による動脈硬化性変化です。特に有症状(狭心痛、失神、心不全)の重症ASは、予後不良で、以前は開胸による大動脈弁置換術(SAVR)が唯一の治療法でした。しかしながら、高齢・脆弱性・合併疾患のために開胸手術不能例、ハイリスクな患者さんが少なからず存在します。このような患者さんに対して、カテーテルを用いて大動脈弁位に生体弁を留置する治療法が経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI:タビ)です。本邦でも2013年10月に認可され、現在では全国177施設で、累計症例数が22,000例を超える状況です。当院は、沖縄県唯一のTAVI認定施設で、導入後5年間で268例施行しました。他府県に比べて高齢かつ重症度・脆弱性の高い状況にもかかわらず、手術死亡(術後30日以内)は0.7%で、自宅退院率も84%と良好な成績でした。平均手技時間も71±41分で、手技に熟練した最近では平均25分前後と患者さんへの負担もかなり軽減されています。
 TAVI専門施設とは、一定数の治療経験(年間平均50例以上:直近3年、計150例以上)があり、1名以上の指導医が在籍していることが条件で、2020年3月に琉球大学病院は認定されました(図1)。全国でもわずか26施設(2020年10月時点:九州・沖縄では3施設)しか専門施設認定されておらず、全国でも有数のTAVI実施施設となっています。

図2:Valve in Valve
図2:Valve in Valve

 この専門施設に認定されることで、すでに開胸手術で生体弁を植え込んだ患者さんで、弁機能不全(人工弁劣化)が原因で再手術が必要な方へのTAVI治療、いわゆる「Valve in Valve」が可能になりました(図2)。更に現時点では透析患者へのTAVI治療は適応外とされていますが、今後適応拡大が見込まれており、専門施設を優先に「透析患者へのTAVI治療」が開始される予定です。
 最新の弁膜症ガイドライン(日本循環器学会:2020年改訂版)上でも75歳以下はSAVR、80歳以上はTAVIを優先的に考慮するとの指標が発表されました。従来のSAVRに加え、体への負担の少ないTAVI治療が可能になったことで、手術の選択肢が増え、患者さんに最適な治療が適用できる新たな時代になりました。
 このTAVIに関するご連絡ご質問は、医療情報提供書を、第三内科岩淵成志あるいは第二外科永野貴昭宛で、本院医療福祉支援センター(シエント)098-895-1371、FAX 098-895-1498へお願いします。