琉球大学医学部附属病院 地域医療部・特命准教授 日本緩和医療学会専門医 中島信久
巻頭の挨拶 いつでもどこでも切れ目のない緩和ケア」を目指して

 新年あけましておめでとうございます。平成29年10月1日付けで琉球大学医学部附属病院地域医療部に緩和ケアチーム専従医師として赴任しました中島信久なかじまのぶひさと申します。今回は「緩和ケア」についてお話したいと思います。
 まずは自己紹介から。東京に生まれ育ち、1987年に北海道大学医学部を卒業後、同大学第一外科に入局し、21年間、大学病院ならびに関連病院で外科治療、抗がん剤治療、緩和ケアなどに従事しました。2008年より緩和ケアを専門とし、東札幌病院、旭川医大病院、東北大学病院などで緩和ケア病棟や緩和ケアチーム、在宅緩和ケアの診療に携わりました。昨年春、藤田次郎病院長、新崎章地域医療部長とお話を重ねていく中で、沖縄のがん医療、緩和ケアの発展のために尽力したいという思いが膨らみ、このたび、琉球大学での勤務が実現しました。25年ほど前、外科医として県立南部病院(糸満市)に勤務した経験がありますので、今回は2度目の沖縄勤務となります。

 それでは緩和ケアのお話を始めます。最近、「緩和ケア」という言葉を見聞きする機会が増えています。緩和ケアと聞くと「末期がん」をイメージする方が多いと思いますが、その概念は変わりつつあります。がん治療中から痛みや吐き気などの身体の症状に加えて、気持ちのつらさなどの精神的な苦しみ、さらには仕事や生活のことといった社会的な問題など、様々なことで苦しんでいる方がたくさんいるという現実があります。それゆえ、がん治療中であっても「緩和ケア」は必要であり、「がん治療と『併走』して緩和ケアを行う」ことがポイントとなります。がん対策推進基本計画(第2期:2012年策定)において「がんと診断された時からの緩和ケア」の重要性が提言されたことも追い風となり、この概念の実現に向けて世の中は少しずつ動き出しています。
 琉大病院に緩和ケアチームが誕生して10余年が経ちます。緩和ケアやがん治療を専門とする医師、看護師、薬剤師を始めとした多職種からなるチームで、がん治療中〜治療後の患者さんに対して様々な苦痛を緩和し、安心して療養できるように支援しています。ところで、病状がだんだんと変化していく中で患者さんやご家族が希望する療養場所は変化していくことが多いです。そのため地域の病院や在宅療養支援診療所などとも連携しながら、その時々に患者さんやご家族が希望する環境で安心して療養できるように支援することが大切です。緩和ケアチームはこうした院外との連携の調整にも関わります。これらの取り組みを通じて「いつでもどこでも切れ目のない緩和ケア」を提供することを目指していきます。
 今後はこうした取り組みを琉大病院から沖縄県全体に広げていき、沖縄に暮らす方々ががんになっても安心して暮らせる世の中を当たり前にしたいと思います。あなた自身に降りかかった困りごと、心配ごとを自分だけ抱え込まずに一緒に話し合って解決していきましょう! 緩和ケアチームにお気軽にご相談ください。

お問い合わせ先:緩和ケアセンター・ジェネラルマネージャー多和田(電話 098-895-3331 PHS4185)