特集1 皮膚の乾癬と関節の痛み

宮城拓也 皮膚病態制御学講座(皮膚科)助教

皮膚の早期診断で、将来の関節の変形を防ぐ

 乾癬かんせんでは、写真のような、銀白色のかさかさ(鱗屑)がつく紅色の皮疹が出現します。全身どこの皮膚にでも出現しますが、頭、肘や膝、臀部、脛に多く、時に爪も白く厚く変形します。細菌やウイルスの“感染”と間違えられることが多いのですが、この“乾癬”は他の人に伝染することはありません。乾癬は皮膚の赤みだけではなく、関節にも症状を出ることがあり、乾癬性関節炎と診断します。乾癬性関節炎が進行すると、関節リウマチと同じように関節が破壊され、慢性的に痛みが続き、動きが悪くなります。こうなる前の皮膚の症状と僅かな関節の違和感や痛みの時期に、適切な治療を開始することが大事です。今では関節の変形を防止できる注射や点滴薬が開発されており、以前にも増して、皮膚科での早期診断が重要です。
 乾癬は通常、皮膚の見た目で診断します。皮膚科を専門としていない医師には診断が難しいのですが、皮膚科専門医であれば診断は難しくありません。しかし、皮膚症状が軽く症状が頭に限られている患者さんでは、脂漏性皮膚炎という皮膚病と乾癬の鑑別は、熟練した皮膚科医であっても難しい事もあります。脂漏性皮膚炎という診断で皮膚科に通院し、関節が痛くて整形外科にも通院していた方が,結局は乾癬性関節炎であったこともあります。心あたりのある方は、かかりつけの皮膚科医に一度相談した方が良いと思います。琉球大学皮膚科では、乾癬性関節炎による関節変形を防ぐために、積極的に生物学的製剤という注射薬による治療を行っています。この新薬は皮膚や関節の病変の原因である体内の炎症物質をブロックする薬で、副作用や合併症が少ないですが、薬剤費が高価です。
 乾癬を発症する誘因の1つとして、生活環境、特に食事の関与が最近の研究で明らかになってきました。肉などに多い飽和脂肪酸の取り過ぎが、肥満と共に乾癬を悪化させます。重症で肥満の乾癬患者が少なくなるよう、沖縄県の脱メタボが達成されることは、内科医のみならず皮膚科医の望みでもあります。
乾癬の皮膚症状

乾癬の皮膚症状

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