特集2 骨軟部腫瘍と患肢温存術

前原博樹 整形外科医師(高気圧治療部特命准教授)
 骨軟部腫瘍とは骨や軟部(筋肉、脂肪、神経、血管など)の組織から発生する腫瘍で良性と悪性があり、悪性腫瘍は特に肉腫と呼ばれます。多くの悪性腫瘍は上皮性でがんと呼ばれ、その認知率は非常に高い一方、原発性肉腫は全悪性腫瘍の1%を占める程度で認知率は非常に低いです。発生数が少ない一方、種類は多く診断が困難なことから進行して病院受診される方が多いのが現状です。
 骨に発生する悪性腫瘍で最も多いのはがんの骨転移で、特に乳がん、肺がん、前立腺がん、多発性骨髄腫(血液のがん)が多く、骨折や骨の痛み、関節痛から発見されることも多々あります。骨原発の悪性腫瘍で最も多いのが骨肉腫で、沖縄県では年間3〜5人程度の発生数です。
10歳代に発生することが多いため、両親が成長痛と思い込み病院受診が遅れることも多く、受診時に肺や他の骨に遠隔転移を伴っていることも少なくありません。長引く骨の痛みや関節痛は整形外科受診をお勧めします。
 「しこり」とは筋肉や皮下組織が凝り固まった様子をさし、「こぶ」とは隆起した異常な組織をさします。急に大きくなる「しこり」や「こぶ」は軟部肉腫の可能性があります。筋膜あるいは骨膜に浸潤し初めて痛みを感じて受診する方も多く、受診時に肺に転移を生じていることもあります。体に5cm以上の「しこり」や「こぶ」を自覚している方は、是非検査を受けることをお勧めします。
 骨肉腫を例にとってみますと、1980年代は10人中1人しか生存できない状況で、患肢の切断を余儀なくされていましたが、化学療法や手術の進歩に伴い現在では10人中8人が生存できる時代になり治療成績は劇的に改善しています。
 琉球大学医学部附属病院整形外科では上述した悪性骨軟部腫瘍に対して腫瘍細胞を死滅させ再利用する液体窒素処理自家骨移植術、血管柄付き骨移植術、腫瘍用人工関節置換術を行うことで骨の再建を行い、アルコール処理法で可能な限り重要な神経血管を温存、また、巨大な筋肉や皮膚の欠損に対して筋皮弁術を用いて、患肢を温残する手術、さらには機能を温存する手術を行っています。
液体窒素処理自家骨

液体窒素処理自家骨

腫瘍用人工膝関節

腫瘍用人工膝関節