診療科の紹介:麻酔科

皆様に信頼される薬剤部を目指して

 このたび、平成27年8月1日付で琉球大学医学部附属病院薬剤部長に就任いたしました。沖縄県唯一の大学病院で薬剤部長を務める重責を胸に日々業務に邁進しております。

 私は、北海道の苫小牧市というアイスホッケーで有名な極寒の街で生まれました。平成6年に北海道大学薬学部を卒業し、平成11年に北海道大学大学院薬学研究科にて鎌滝哲也教授のご指導の下で「薬物代謝の遺伝的多型と薬物間相互作用:抗ヒスタミン薬を中心として」という研究テーマで博士号を取得、米国バンダービルト大学医学部の博士研究員として2年間留学いたしました。その後、群馬大学医学部附属病院薬剤部(薬剤師・助教)、信州大学医学部附属病院薬剤部(准教授・副薬剤部長)、名古屋市立大学薬学部(臨床薬学教育研究センター准教授)を経て、琉球大学に参りました。 途中、一度アメリカに立ち寄ったものの、北海道から沖縄まで日本を縦断した旅路の末、今日に至っております。

 この間、主に薬物代謝酵素(チトクロームP450)を題材とした、薬の効果・副作用発現機序解明の研究と、薬剤師としての臨床業務をつなぐトランスレーショナルリサーチを実践してまいりました。薬剤師は、患者さんの安全・安心な治療のために調剤などの業務を行う傍ら、その役に立つような最新の研究を日夜進めております。琉大病院の薬剤部においても、臨床上の問題を解決すべく、医療現場に根差した研究を実践したいと考えております。特に、薬物代謝酵素・薬物トランスポーター・薬物レセプターなどの遺伝子解析研究を行い、個別化薬物療法を診療科の先生と協力して推進していきたいと思っております。また、薬剤部は、国立大学医学部附属病院の使命である臨床・研究・教育の3本柱をバランスよく行いたいと考えております。 

 @臨床:薬剤師は現在、病棟へ活躍の場を広げ、患者さんのために頑張っております。医療チームに積極的に参画し、必要に応じてフィジカルアセスメントを副作用モニタリングなどに使うことができる薬剤師養成を目指しております。災害時に制限された環境下においても柔軟な対応ができる薬の専門家としての薬剤師の養成にも努めたいと思っております。がん専門薬剤師などの専門・認定薬剤師の取得もサポートしていきたいと思っております。

 A研究:薬剤部では基礎と臨床、両方の研究に力を入れて行きたいと考えております。効果や副作用が薬物の血中濃度で予測できる薬物については積極的に治療薬物モニタリングを、遺伝子解析で予測できるものはSNPsなどの薬物投与前(迅速)診断を推進いたします。また、その成果を学会発表や論文発表することで社会に貢献するとともに、薬剤師のやる気につなげていきたいと思っております。

 B教育:沖縄県には残念ながら薬学部が存在せず、全国の都道府県の中では最も薬剤師が不足している県であります。薬剤部では、患者さんにとって頼もしいと感じられる「顔が見える薬剤師」を沖縄県で育てるためには何が必要なのかを常に考えながら、薬学部実務実習生を積極的に受け入れ、同時に若手薬剤師の教育も重点的に実施していきたいと考えております。また、何らかの理由で一時的に離職している薬剤師の先生が不安なく職場復帰できるようなサポート体制の充実も、沖縄県薬剤師会・沖縄県病院薬剤師会と連携して進めていきたいと考えております。

 赴任して2ヶ月、なかなか思うように活動できていない面も多くございますが、この素晴らしい琉大病院で患者さんにより良い薬物療法を提供できるように、薬剤部一丸となって努力していきたいと思っておりますので、どうか皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。