琉球大学病院で初の生体肝移植を行いました

高槻光寿 第一外科長  本年3月、琉球大学病院で第1例目となる生体肝移植を行い、患者さんが無事に退院されました。40代の若い女性の方で、原疾患は原発性胆汁性胆管炎(PBC)と呼ばれる難治性の肝疾患で最終的に肝硬変となり、黄疸が強く予断を許さない状態と診断され、50代の旦那様が肝臓の一部(肝右葉:全体の65%程度)を提供されて移植手術を行いました。手術時間は約10時間、自身の肝臓を全て取り出して旦那様の肝臓を移植し、すぐにいただいた肝臓が働いて順調に回復しました。血液型が旦那様はA型、患者さんはO型と異なる組合せでしたが、抗体を産生するBリンパ球の機能を抑える薬剤(リツキサン)を術前に投与することにより、全く拒絶反応を起こすことなく経過しました。
 手術直後はICUに入りましたが、すぐにリハビリできるようになり、2週間で肝機能の数字が正常となり、3週間でご家族とともに元気に退院されました。退院後も自宅で元気に過ごされており、手術の前は黄疸と身体のだるさでつらかったようですが黄疸もとれ、「身体がとても軽くなった、マラソンも走れそう。」と笑顔で話されています。肝臓を提供されたドナーの旦那様も手術後10日で退院され、社会復帰されています。肝臓も順調に再生し、肝機能も問題ありません。
 生体肝移植は日本では1989年に開始され、現在までに全国で9,000名以上の患者さんに行われて保険も適用される一般的な治療となっていますが、沖縄では数件しか行われていませんでした。琉球大学病院でも今まで70名以上の患者さんを県外の大学病院に送って手術してもらっていましたが、これからは自施設でできるようになり、患者さんの身体的・経済的負担が軽減されると期待しています。
 肝硬変の患者さんを診療されている医療関係の方や、肝臓が悪いと言われている患者さん・ご家族からのご相談はいつでも受け付けておりますので、ご連絡ください。

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