琉大病院HOTLINE
第 38 号

平成20年12月22日
発行
附属病院広報委員会

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須加原一博病院長 明るく、満足感の得られる病院を目指して
琉球大学医学部附属病院副病院長 太田 孝男(おおた たかお)

 本年4月より須加原病院長の下で副病院長を努めています。副病院長は経営企画室長を兼ねることから、本稿では大学病院の運営の現状と問題点について述べたいと思います。
 大学病院は文部科学省から配付される運営費交付金と病院収入を総予算として運営されています。運営費交付金は教員(病院の常勤医師)、研修医、一部の非常勤医員、一般事務職員の給与に使われます。一方、病院収入は、看護師・コメディカルスタッフの給与、医療機器の更新、病院の診療経費に使われています。病院の常勤医師は各診療科に9〜10名いますが、その内4〜5名は医学部所属で附属病院での仕事を併任しているのが現状です。言い換えれば、病院で実際に診療に携わっている常勤医師の半分は病院からは給与をもらっていないことになります。また、医師では無く教員として採用されているので、給与は最近話題になっている、沖縄の県立病院医師の半額程度だと思われます。困った事に国の方針で運営費交付金は毎年1%ずつ減額されています。このままであれば、当然、常勤医師の削減が来ます。琉球大学では附属病院の常勤教員定数は削減しないが、医学部教員の定員削減は行う方針のようです。臨床系講座の定員が削減されれば、病院医師の削減に繋がるのは、誰にでも解る事です。医学部長、病院長には定員の確保は当然で、むしろ増員を交渉していただきたい。また、定員削減により病院収入が減少すれば、非常勤医師の充分な確保も不可能になります。しかし、このような状況下でも、大学病院としての機能強化は求められています。
 一般病院と異なり大学病院は教育・研究機関であり、また、地域の中核病院としての役割も担っています。先日、東京都で脳出血を起こした妊娠9ヶ月の女性が大学病院を含む病院で受け入れを拒否され死亡し、東京都の周産期医療体制の不備が話題になっています。琉大病院では6床の新生児集中治療室(NICU)がありますが、満床であっても緊急の場合は受け入れ可能の体制が出来ています。同様な事例が起こったとしても、NICU側の理由で受け入れを断ることはありません。ただ、今回の事例のような、脳外科、産科と複数の診療科にわたる場合は現在の体制では同様なことが起こる可能性は高いと思われます。各大学病院にも色々な事情があったのでしょうが、地域医療の最後の砦として機能しない大学病院はもはや中核病院とは言えないのではないでしょうか。現在、大学病院では教員(医師)の定数が各診療科で決まっており、非常勤医師を含めても充分な医師を中核病院として必要な分野に重点配置できません。それぞれの医師の献身的な努力により、何とか大学病院は運営されているのです。このような状況が続けば、若い有能な医師を大学病院に確保するのは難しくなるでしょう。一部の県では大学病院の置かれている状況を理解し、寄付講座を大学につくり、有能な医師の養成・確保に協力しているところもありますが、沖縄県の現状では無理なようです。琉大病院が中核病院としての機能を維持するためには、今後、診療科に捕らわれない医師の重点配置を行う必要が有ると考えています。たとえば、循環器病センタ−や癌診療センタ−を設置し、センタ−所属の病棟をもうけ、関連する各診療科の医師がそこで診療をすれば、共に働く看護師やコメディカルの人たちも専門性をもつことができ、医療水準も上がり、医療事故も少なくなると思われます。
 病院運営に参考になるアイデア等があれば、経営企画室までご意見をお寄せ頂ければ幸いです。

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