第二外科の紹介

  第二外科は、昭和58年4月の琉球大学医学部の発足にともない開講し、本年度が開講20年目の節目になります。当科は琉大附属病院の外科部門の中でも心臓血管外科を中心に、呼吸器外科、内分泌外科を専門として担っていますが、古謝教授の“一般外科学を基礎とした外科専門医“を目指す教育指導の下、全身に及んでその診療、研究、教育を行っています。当医局の構成は、大学医局内が教授以下、助教授1名、講師3名、助手4名、医員6名、研修医5名の計20名で、他県内外の関連病院に出張中の医局員が41名で、総勢61名です。
 当科の心臓血管外科は歴史的には、琉球大学保健学部附属病院時代の昭和51年に現教授の古謝景春の帰沖にさかのぼります。それ以前は、本県の心臓外科手術対象患者はその一部が他府県まで渡航して手術を受けていたにすぎず、多くはその恩恵を受けられない状況にありました。現在では定期手術として週3例の開心術を行ない緊急手術も含めて年間平均150例余の開心術症例を施行し、昨年12月までの過去26年間に行った心臓血管手術症例数は4727例を数えその内訳は症例数の順に心臓弁膜症、先天性心疾患、冠動脈疾患、大動脈瘤手術、閉塞性動脈硬化症等、静脈系手術、ペースメーカー移植、その他(グラフ 1)でした。心臓血管外科の対象疾患も食生活の欧米化とともに変化してきており動脈硬化に起因する疾患、特に冠動脈患者が増加してきています。最近、過去5年間の心臓手術症例の内訳でも手術件数の半数以上が、冠動脈バイパス手術が占めるようになってきており、この傾向は今後益々顕著になってくるものと思われます。同時にその外科治療の進歩も目覚ましく、その中でもより患者にやさしい低侵襲の心臓外科手術である人工心肺非使用下の冠動脈バイパス術が行われ、従来では手術適応からはずれていた重症患者や80歳以上の高齢者患者に対しても安全に手術が可能となってきています。当科では1998年より同手技を導入し現在までに176例の患者様に行ってきましたが、昨年は84例の冠動脈バイパス手術症例中61例に行い、7割以上が本手技によるバイパス手術でありました(グラフ 2)。心臓血管外科の中でも、最も困難な手術の1つに弓部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤手術があります。当科では弓部大動脈瘤手術においては国内はもちろん欧米に先立ち分枝付き人工血管にて置換術を行ってきており、また胸腹部大動脈瘤手術においては現在まで行った53例の胸腹部大動脈瘤手術症例中、まだその回避法が確立していない術後対麻痺の合併症を経験しておらず、我々の術式はその成績も含めて国際的にも注目されています。肝臓部分の下大静脈が閉塞するBudd-Chiari症候群に対する外科治療は先人達により様々な術式が行われてきたが、古謝により開発された術式は根治的で、またその手術成績も極めて良好であり、Budd-Chiari症候群に対する定型手術の完成との高い評価を受けています。本疾患患者は県内はもちろん本土各地より紹介来院し手術を受け術後軽快退院して帰っています。これは、本県心臓病患者がその治療の為に苦労して本土まで渡航していった時代を省みれば隔世の感があると言わざるを得ません。
 当科では以上の心臓血管外科を柱としてその診療を行っていますが、他に呼吸器外科においては胸腔鏡下低侵襲手術を行い術後患者のQOLの向上を計り、また手術困難あるいは積極的治療のない消化器進行癌に対しては琉大倫理委員会の承認のもと集学的治療を駆使してその治療にあたっています。内分泌外科の乳癌治療では、手術根治性を保ちながら積極的に乳房温存術式を行っており患者の満足が得られています。同時に地域との連携を重視し乳癌健診医師および技師の講習会を開催しその育成に貢献してきました。
 当科では従来より多くの学会主宰を仰せつかってきました。これも、心臓血管外科を中心として各分野で様々な工夫を先駆的に、またはリードして行ってきたものと自負しています。主なものでは第36回日本脈管学会総会、第20、33回日本胸部外科学会・九州地方会総会、第77回日本血管外科学会・九州地方会があり、昨年は第30回日本血管外科学会総会、第39回九州外科・内分泌外科・小児外科学会を主宰し成功裡に終えることが出来ました。また本年11月には、国際学会である第3回日独血管外科学会を2000年G8サミット会議が行われた万国津梁館で開催する予定です。
 当科はその診療科目名から推察される通り、当院でも屈指の厳格で忙しい科ですが、忙中閑有りで“患者にはやさしく、親切に”をモットーに今後も、沖縄県の地域医療に貢献するのはもちろんのこと、外科学の進歩の一端を担うべく、臨床、研究に邁進する方針であります。

(第二外科 國吉幸男)
 

グラフ 1
グラフ1
グラフ 2 年次別冠動脈バイパス手術症例数
     (琉球大学第二外科1979-2002)
     患者総数:893名
グラフ2



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