新病理部長ご紹介
平成13年4月1日付けで、着任しました病理部長の吉見直己(よしみなおき)です(第1病理学講座教授と併任)。前任地は岐阜大学医学部第1病理学講座でした。専門はがんの化学予防とその発癌抑制機序の分子病理学的解析というやや耳慣れないものです。簡単に云えば、がんを予防する物質を見つけだすことと、その物質がなぜがんを作らないようにするかを科学的に研究することです。従って、このがん死亡の少ない長寿県の沖縄の食事等から新しい物質が見つけだせないかと大いに期待しております。沖縄の地は初めてでありますが、米国留学時はアメリカ西部のテキサス州(現ブッシュ米国大統領のお膝元)に行っておりましたので、こちらの鋭い日差しと同じ様な気候で、驚きませんでした。ただ、若干湿度が高いのがやや堪えます。
さて、この病理部は昨年度に新たに検査部から独立いたしました部門で、現スタッフとして検査技師二名と非常勤職員一名が、医学部の第一及び第二病理学の両講座の支援の下で日夜頑張っております。しかしながら、病理部といっても一般
の方にはなかなか馴染みのない部門で、どんなことをしている所かなかなか理解し難いのではないかと思われます。欧米では医学における病理学がどういう学問であるかとか、そこでの病理医といえば、何をする医師であるかは一般
の方でも理解されて認知されているようですが、残念ながら、日本ではその認知はまことに低いものがあります。病理医の存在を欧米並みにとは云わないまでも少しばかり理解してもらえば幸いです。では、日頃何をやっているのでしょうか?それは、皆様方は内科とか外科とかのいろいろな診療科を受診なされているでしょうが、そこでは時に「・・さん、少し胃が荒れているようですから内視鏡で検査しましょう」とか、「少し変なものが出来ているから、手術しましょう」等で、皆様方が痛い思いをしながら、体の一部を採取されたり、手術されたりすることがあります。では、そこで採取されたものはどうなるのでしょうか?痛い思いをしているので、そんなことまで悩んでいる暇はないかも知れませんね。ただ、採取した医師が調べてくれていると思っておられる方が多いと思います。また一方、市町村のがん検診という形で、喀痰や子宮の細胞診検査を経験されたことがある方も多いのではないかと思います。そこで取られた細胞は誰が検査して判定されているのでしょうか?そうです。実はそうした組織や細胞がどんな形になっているのかを診断する部門なのです。私たちのからだは数十億という細胞の集合体であることはご存じでしょうが、それらの細胞一つ一つを観察してどのような状態になっているかを見つけ出すのが私ども病理医の仕事であります。それ故、患者の皆様方とは直接の交流はございませんが、当方からすれば、皆様方とは組織・細胞の形で、深くお付き合いをさせてもらっているのです。こうした私どもの結果
は皆様方に痛い思いをさせたことに応じて、皆様方のからだの状態を、血液検査やレントゲン等による画像検査以上の正確さで把握し、時には皆様の治療に直結する助言を臨床医に返答しております。
他にもやらねばならない業務もございますが、主たる業務を述べさせていただきました。少しばかり病理医の存在を理解していただけたでしょうか。現スタッフは新たにスタートしたばかりで専任助教授を全国に公募をしており、今後、より一層の充実を図っていけるものと思っております。病理部は病院業務としては裏方ではあり、前述のように細胞としてしか皆様方とはお目にかかれませんが、医療の質的な根幹に係わる部門であることを充分認識して努力し、信頼して貰える部門にしていく所存ですので、どうぞ宜しく御願いします。
(病理部長、第一病理学教室 吉見直己)
|