ラオス国セタティラート病院改善プロジェクトでの活動

 現在、琉球大学医学部附属病院(琉大病院)は、国際医療協力活動に参加しており、タイ、ベトナム、カンボジアに隣接するラオス国に対する医療協力活動を行っています。これまで琉大病院からラオス国に様々な分野から専門家が派遣されており、派遣された専門家は内科医、小児科医、婦人科医、看護婦、薬剤師、栄養士、病院管理、検査技師などで、うち、栄養士、看護婦さんは、現在ラオス国での活動に励んでいます。

 国際医療協力活動というのは、医療活動を行う国の医療技術を向上させ、その国の医療水準を上げることを目的とした活動を大きな目標としています。私も、ラオス国の薬局運営改善指導を目的として、2000年11月20日から2001年4月30日までラオス国に専門家として派遣されました。私が専門家として勤務したセタティラート病院は、42年前に建築されたもので、老朽化が進んでいましたが、昨年の12月に日本の援助で新病院が建築され、今年の2月に開院しました。私は、この派遣期間中に、病院の引っ越し業務と、新病院開院に準じての薬局業務改善活動を行ってきました。これからその活動内容とラオス国の紹介を行いたいと思います。これまで私は、全くの箱入り娘で、日本国から一度も出たことがありませんでした。初めての海外経験が旅行ではなく、仕事という事ですから、緊張も大きく、出国までは本当に不安な毎日でした。しかし、いざ出国、ラオス国に到着してみると、想像していたのとは反対に、一人で市場で買い物ができるほど安全なところでした。しかし、ラオス国の医療の程度は低く、まず医薬品が不足しており、また、患者さんに対する対応が十分とは言えないものでした。その理由として、ラオス国の経済事情が挙げられます。ラオス国の収入は、琉大病院のものとほぼ同じ額です。一つの国の収入が、日本の一つの病院の収入と同じということからして、医薬品が不足していることもうなずけると思います。私は、病院の医薬品を増やしながら、患者さんによりよい医療サービスが提供できるように、新病院開院に向けてセタティラート病院医師の意見を十分に採り入れ、病院内にある薬の見直しを行いました。開院当初は病院も大きな赤字で、運営が大変でしたが、1ヶ月後には病院内にある薬の種類が増えたこともあり、来院される患者さんの数も増え、病院の収益を以前の約10倍に増加することができました。このことにより、病院職員の表情にも活気がみられるようになり、患者さんに対する対応も良くなってきました。その他、医師が薬を処方するときに使用する処方箋の書き方にもきちんとした決まりがなかったため、誰でもきちんとわかる方法へと改めました。このことにより、患者さんは安心してどの薬剤師からもお薬に関する正確な情報を得ることができるようになりました。

 私は、ラオス国民に薬局運営に関する指導を行ってきましたが、逆にラオス国民から教わったこともたくさんあります。ラオス国民は、家族や、人のぬ くもりをとても大切にします。また、とても気さくで、全くの他人であっても、ちょっと知り合いになれば、その出会いをとても大切にします。特にその気さくなところを感じることができるのは、市場です。市場での買い物はとても楽しく、日本ではあまりみられない、値段交渉が当然のようにみられます。すぐに意気投合すれば、とても安い値段で買い物をすることができます。日々の業務の気分転換を行うために、私は、毎週末市場へ出かけ、市場のおばちゃんたちとの値段交渉を楽しみました。もちろん、このような値段交渉を行うために、私はひたすら現地語のラオス語を勉強しました。その甲斐あって、約2ヶ月後には、何とか会話ができるようになっていました。ひとたび会話ができるようになると、さらにラオス人と知り合う機会が増え、とても楽しい日々を送ることができました。気さくなラオス国民は、とてもお酒好きで、ちょっとしたことがあったとき、また、特に何もなくてもすぐにお酒を飲みます。お酒といってもほとんど現地で作られるビールで、これはなかなかおいしかったです。ラオス国民はお酒ばかり飲んでいて楽天家なのかと思いきやそうではありませんでした。彼らは毎日朝と夕方にラジオやテレビで放送されるラオス国のニュースからラオス国の現状を把握することにつとめていました。そんな一面 を知ることができたときには私の帰国も間近で、彼らのことをもっと知りたいと、惜しい気持ちでいっぱいでした。

 この5ヶ月半の外国での活動は、患者さんに対する医療サービスの向上を図るための医療従事者の教育というもので、日本での、患者さんに対する医療サービスを実際に行うこととは全く異なるものでした。派遣当初はかなり戸惑いましたが、こうして任期を終えてみると、管理する立場というのは本当に心労が耐えない、大変なことだということを感じました。これからは、こういう外国での貴重な体験を無駄 にすることがないように日々つとめていきたいと思います。

(セタティラート病院改善プロジェクト/薬剤部 宜保江利子)

 




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