●● 特別講演から ●●

外国人患者をめぐる諸問題 

 職員を対象にした特別講演会が、去る10月7日当院で開催されました。

講師は、東京地区で沢山の外国人患者様を診療しておられ、この領域では御高名な小林米幸先生で、テーマは、「外国人の診療をめぐる諸問題」でした。その内容を簡潔にまとめていただきましたので紹介します。

 現在、我が国には160万人を超す外国人が居住していると推察されており、医療従事者として外国人患者に対応すること自体は既に珍しいことではなくなっている。差別なく良心にのっとった医療を彼らに提供したいという「熱き想い」はいかなる医療従事者も程度の差はあれ抱いている。しかし、「人間として平等」ということは別に彼ら外国人と日本人との間にさまざまな「違い」が存在し、それに起因するトラブルも発生している。いったいどのような点に気をつければよいのか、述べてゆきたい。

 1.どのように受け入れるのか

基本的には日本人と外国人を全ての面で同様に扱うのが望ましい。外国人を差別してはならないが、逆に優遇することは日本人に対する逆差別になりかねない。

 2.医療に対する考え(件)方のちがい

未だに日本人には「全ての判断を医師に任せる」というタイプの患者様が少なくないが、特に欧米人には「医療は契約」という考えが強い。従って彼らに対する際はインフォームド・コンセントを重視し副作用や合併症に至るまで十分に話し合っておく必要がある。また一般的に外国人は自己管理志向が強く、こちらが思ったようには行動してくれないことがままある。この際も常に専門職として自らの意見は明確に提示しておくべきである。

 3.言語の問題

あまりにも大きな壁である。現時点では通訳の活用、各種対訳ツールの活用などが考えられる。またAMDA国際医療情報センターでの電話通訳を利用する方法もある。さらに積極的に医療機関において自前の医療通訳の養成を企画するという方法もあろう。医療案内や掲示に外国語を併記したり、入院時の病棟案内などを外国語でテープに吹き込んでおき、聞いてもらうなどの外国人患者の存在に配慮したきめ細かな対応も必要である。

 4.医療費をめぐる問題

外国人の多くは生活の基盤が日本にはなく、脆弱な財政基盤の元に生活している。ゆえに彼らが「医療費を支払いきれない」という結果を極力招かないような配慮をしていかねばならない。銘記すべきはこのような事態は医療機関の経営を危機に陥らせることにつながりかねないということである。常日頃、医療費を意識したインフォームド・コンセントを実践し、外国人に関するさまざまな医療制度について研究しておくべきである。外国人の場合、どのような医療制度が適用されるかはその人の在留資格により決定されており、ソーシャル・ワーカーなどの専門職が身近にいれば、彼らの意見を尊重したい。

 5.医療に関する風俗・習慣の違い

医療は文化であり、宗教によるもの、よらないものなど国、地域や民族によって我が国のそれとはさまざまな違いがある。医師に対する考え方、診察の仕方、医療に関する嗜好、薬の摂取方法、食事内容、妊娠・出産に関する考え方、入院中の入浴に至るまで課題は多い。命に直接関わり合うことでなければ、日本のやり方と患者様のやり方とで、どちらが正しいかを争うことはあまり意味がない。患者がリラックスするために彼らのやり方を医療機関に支障がない限り、尊重してもよいと考えている。

 6.疾患の違い

日本ではあまりお目にかからない疾患を抱える患者様もまれではなく、常に自らが知らない患者の可能性を考慮しながら診察を進めていく姿勢が大切である。
 以上、外国人をめぐる諸問題とその対応について私見を述べてみた。


         医療法人社団小林国際クリニック院長、AMDA国際医療情報センター所長 小林米幸 

 

医療通訳ボランティア

 琉大病院は、南に開かれた国際性豊かな病院を目指しています。しかし、外国人患者を受け入れるのに大きな問題は言葉です。現在のところ英語については職員の中で英語ができる者の協力を得て何とか対応しています。その他の言葉については、留学生に協力を依頼したりしていますが苦慮しているのが現状です。

そこで「医療通訳ボランティア」に関心のある方に対して「医療通訳ボランティア講座」を開きそこでボランティアを養成することも考えられています。この件について御意見をお待ちしています。

御意見は、総務課庶務係 電話098−895−3331にお願いします。



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