世界6か国の泌尿器科専門医が研修

 開発途上国においては、泌尿器科疾患が多いが、専門医が不足しており十分な診療がされていない。そこで最新の泌尿器科診療を見ていただくとともに、我々が各国の状況を理解し、如何なる援助が出来るかを勉強することを目的として、平成10年11月9日より20日までの約2週間、国際協力事業団(JICA)の研修員を受け入れた。本研修に参加したのは、マケドニア、タイ、マレーシア、ブラジル、中国、フィジーより各1名づつ計6名の泌尿器科の医師で、年齢は27歳から49歳にわたり、宗教もキリスト教、イスラム教、ヒンズー教、仏教と幅広い背景を有していた。

 医学部での開講式では、柊山幸志郎医学部長、小椋 力病院長よりの歓迎のお言葉を頂戴し、病院内施設見学をすませて、研修が始まった。研修は出来るかぎりありのままを実際に見てもらうこととし、我々が日常行なっている朝7時よりのカンファレンスと夜9時までのカンファレンスに参加してもらった。まず参加者一同の第一番目の印象は”workaholic”の一語に集約された。レジデント(研修医)あるいは学生とともに行動してもらい、毎日の病棟回診、月、火、金曜日は外来と血液浄化療法部、水、木曜日は手術を見学した。午後は助手以上が1〜2時間自分の専門のセミナーを実施し、討論を行った。回診、外来、手術、カンファレンス中には質問が乱れ飛び、その質疑応答を通じ短時間で彼らの医学的実力が把握できた。かなりの高いレベルの泌尿器科の知識を持つことが推察されたので、それに応じてセミナーの内容を変更した。全体を通じ彼らはきわめて積極的で、かなりのエリート集団であることが感じられた。

 第1週目の週末には福島に移動し、民間の施設に於いて、腹腔鏡を用いて、ブタの副腎と腎の手術の実習を行った。秦野助教授を含む3名の教室員が同行し泊りがけでの研修を行い、手術時の通訳、手術のアシスタントとてんてこ舞いをした。東京で週末を過ごし、第2週目に入り、また朝7時からの忙しい研修に戻った。

 11月17日には桂 幸昭学長を表敬訪問し、琉球大学が多くの留学生を各国より受け入れていることなどのお話を伺い、その後本学の諸施設見学などをおりまぜ、かなりのハードスケジュールをこなした。その日は沖縄オンコロジーセミナーに参加し、地域の泌尿器科の先生と大雪の北海道より講演に来られた札幌医大の塚本教授とも交歓の場を持った。

 少ない医局員で外国人6名を受け入れることについては若干の不安もあったが、同時に病棟実習をしていたポリクリの学生6名が積極的に協力し、最初の週に夕食をともにしてから友好的な関係となり、いろいろ細かい面倒を見てくれて大いに助かった。カンファレンス、病棟回診では学生も英語でかなり説明が出来たので、よく理解できたようであった。

 11月19日には医学部の留学生との交換の場(Get-together party)をもった。安澄文興国際交流委員長も参加して下さり、11カ国よりの留学生20名を含めた、総勢40名の関係者がそれぞれの母国語を交えての楽しい一時を持つことが出来た。

 自国には最新の医療器械はないが、それを知識と工夫と努力でカバーしようとしている彼らを見るにつけ、最新の医療器械に恵まれていることを当たり前のように感じ受け入れている我々が忘れていたものを再認識させられた。我々が普段琉球大学病院で実施している腹腔鏡手術、前立腺癌の神経温存手術、腎癌の腎温存手術などを見てもらうことが出来、非常に感銘を受けたようであった。確かにこれらの手術は日本でも多くの大学が手がけているものではなく、琉球大学附属病院ではそれを行なう道具と専門のスタッフがそろっているために出来るのである。短い研修期間をフルに活用しようとする彼らの熱意にうたれた2週間であった。むしろ教わったのは我々の方かもしれないし、教室員、病院のスタッフ、学生は良い刺激を受けた。

 2週間の間、ご協力をいただいた各施設・部門の皆様にこの場を借りて感謝し、このような機会を与えてくれた国際協力事業団(JICA)と沖縄国際センター(OIC)に謝意を表したい。

     (文責 泌尿器科 小川由英、秦野 直、糸数留美子)


開 講 式 で の 研 修 生





●● 患者様の声 ●●

外国人患者の入院時の感想

 当医学部の大学院生として研究に従事しています。去る9月上旬、交通事故にまきこまれ足を骨折しました。救急部を受診後当院の整形外科に直ちに入院しました。手術についての説明も英語でとてもていねいにしていただき不安はありませんでした。手術が終り退院し、ほぼ普通の生活ができます。ありがとうございました。

 手術の細かなことはわかりませんが成功だと思います。ナースに部屋に来てしてほしい時にボタンを押すとすぐに来て下さいました。急患が入ったために手術の日が少し遅れましたがとくに不都合はありませんでした。日本語が十分にできませんが英語の話せるナース、ドクターに対応していただきとくに困ったことはありませんでした。外国人でも安心して手術が受けられました。

                                       29才男性・留学生



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