第一回尿路結石症コンセンサス・ミーティングに参加して

 

 2001年7月3日から4日にかけて、パリにて開催された1st International Consultation on Stone Diseaseへ参加する機会を得ました。会場のラファイエット・ホテルは凱旋門と新都心の中間に位置し、ブローニュの森の近くという閑静な場所にありました。また、近代的なシティホテルであり、国際学会の会場になることも多いということでした。

 さて、この会合は世界保健機構(WHO)後援による第一回尿路結石症コンセンサス・ミーティングであり、世界中から尿路結石に関する第一線の研究者および臨床医が集まりました。日本からも私を含め5名が参加し、小川教授は「尿路結石症における尿中飽和度と危険因子」そして、私は「沖縄県における尿路結石分析の結果:シュウ酸カルシウムと尿酸結石の占める割合が多い」という演題でポスター発表をしました。

 毎年、WHOはテーマをひとつの疾患に絞りミーティングを開いてきました。これまで泌尿器科領域では、前立腺肥大症、前立腺癌そして尿失禁がテーマに挙げられ、検討されました。そして、今年初めて、尿路結石症がテーマに選ばれました。その栄えある第一回目のミーティングで当泌尿器科教室の小川由英教授は、杏林大学泌尿器科東原教授とともに委員に選出され、討議の中心的役割を担っていらっしゃいました。

 今回のミーティングでは、尿路結石症における概念、原因、治療そして予防に到るすべての事柄について、朝から晩まで活発な討議が行われました。しかも、第一線の研究者および臨床医が一堂に会したため、しばしば議論が白熱し、予定時間を超過することが常でした。このため、休憩時間や食事の時間が切り詰められました。しかしながら、国際学会に参加していつも驚かされるのは、欧米人のタフネスぶりです。今回もwelcome partyが夜の11時過ぎまで開かれていたにもかかわらず、翌朝は皆早起きして会議に出席し、議論をしていました。

 ミーティングの話題の中で印象に残ったのは、私たちが研究テーマとしているシュウ酸に関することでした。ここで、シュウ酸について、簡単にご説明いたします。尿路結石の大部分は、カルシウムを含むカルシウム含有結石より成ります。そのカルシウム含有結石の80%以上を占めるのが、シュウ酸とカルシウムが結合したシュウ酸カルシウムです。シュウ酸はヒトが利用できない物質で尿中へ排泄されます。主として、ビタミンCやアミノ酸のひとつであるグリシンから作られますが、最近では食べ物から吸収されるシュウ酸の影響が大きいことがわかってきました。私たちの研究テーマのひとつに食べ物のシュウ酸の影響がありましたが、以前はそれほど注目されていませんでした。しかし、今回のミーティングでも、食事から摂取されるシュウ酸の影響が大きいことが各方面から指摘されていました。

 また、尿路結石の治療についても興味深いものがありました。現在、尿路結石の治療は体外衝撃破や内視鏡手術の進歩により、体に傷をつけない方法が標準的な治療とされています。そのため、大きな結石の場合、何回にもわたり治療を重ねることがあるのですが、手術(切開手術)を選択のひとつとして考えてもよいのではないか、という報告が出されました。私も状況に応じた選択が必要であると考えていましたので、今後の診療の参考になると思いました。もうひとつの興味として遺伝子関係の議題もありましたが、診断的意義を認めるものの根本的な解決策に結びつかないという意見が出され、尿路結石症における有用性についてはまだまだ先のことになりそうな印象を受けました。

 さて、7月初めのパリは革命記念日(パリ祭)を迎える準備のため、パレードのあるシャンゼリゼ通りや国賓が列席するコンコルド広場前は一変します。特に、今回は21世紀になって初めてのパリ祭ということもあり、例年よりも大掛かりな準備をしているということでした。また、夏期休暇による観光客が増え始める時期でもあります。そして、観光客目当てにスリなどもパリに集まってくるということです。私は到着した翌日に不覚にもメトロ(地下鉄)の出口でスリに遭遇し財布を盗られてしまいました。このため、パリの観光はあまりできず、ホテルでおとなしく過ごしました。
 このようにいろいろな意味で、実りの多い1st International Consultation on Stone Diseaseへの参加でしたが、このような機会を与えてくださいました各方面の方々に深謝いたします。

             (泌尿器科諸角誠人)

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