放射線部の紹介

 放射線と云う言葉を聞くと「危険なもの」と感じられる方が多いと思います。ある程度以上の放射線をあびると確かに危険ですが、医療で利用されている放射線は微量ですので、体への影響は心配ありません。また、放射線を扱っているのは専門家の集団です。ご安心下さい。
 放射線部の業務は診断と治療の二つに大別されます。診断には、一般撮影、造影剤検査、CT、MRI、血管撮影、RI検査などがあります。治療には、放射線治療、IVR、非密封放射線治療があります。治療については後で述べます。
 放射線部・科には医師12名(内放射線科専門医11名)、研修医数名、放射線技師18名、看護師3名、受付2名、技術補佐1名がおり、画像診断、核医学(RI検査)および放射線治療の3部門に別れて診療を行っています。
 放射線診療のコンセプトとしては、医師、技師、看護師が一体となって、患者様の安全を第一に考え、患者様のためになる検査および治療を行うことです。さて、患者様が放射線部で検査を受ける際の一連の流れについて、ご説明します。患者様の病気は同じ病名であっても一人一人病変の部位やその程度が異なります。我々スタッフは検査前に必ず、この検査を行うことによって、患者様の治療にどう結びつくかを第一に考えます。もし、その検査が患者様に役立たないと考えられる場合には、主治医と相談して検査を中止することもあります。次に、検査施行前にどのように検査をすれば、治療に結びつく最良の検査結果が得られるかを考えます。以前に他の画像検査が行われていれば、前もって見ておきますし、また手術が施行されていれば、どのような術式で行われたかを調べておきます。このように、放射線部のスタッフは患者様が検査を受ける前に既に患者様のことをある程度把握しています。しかし、その情報が必ずしも充分でなかったり、不正確であることもあります。また検査直前に、患者様の状態が変化していることも考えられます。ぜひ、検査を担当している医師、技師に患者様の現在の状態について、お知らせ下さい。特に、アレルギーの方や手術を受けられた方にお願いします。さて、検査が始まります。予約検査の場合には前もってピンクの用紙を患者様に渡してあります。担当の者にそれを見せて、本人であることを確認させて下さい。沖縄県は同姓同名が多いため、患者様の取り違えを無くすために行っている方法です。検査が施行されると、できあがった画像を見て、これで検査を終了して良いか、追加検査が必要かを放射線科医が判断します。画像の多くは、放射線科専門医により読影されます。どの部位にどのような異常があるのか、近接する臓器との関連はどうか、他の部位に異常はないかなどを報告書に記載します。以上の所見から考えられる疾患を幾つか記載します。最後に、患者様の種々のデータを総合して、最も考えられる疾患名が記載されます。もし、最終診断が付かない場合には、次に何の検査をすれば良いかを記載します。これが放射線検査結果報告書です。これをフィルムと同じ袋に入れて、外来や病棟に配布されます。この報告書は必ずカルテに添付しなければなりません。前にも述べましたが、病気は人様々です。診断した病名が必ず当るとは限りません。そこで、我々放射線科医師は各診療科の医師とカンファレンスをしています。我々の診断結果と最終診断があっているか、また違った場合に何故そうだったかを考え、また以前に学会などに報告された情報を調べて、日常の診断技術を向上する努力を行っています。このように、我々スタッフは患者様と接する機会はそれほど多くありませんが、病院の中では縁の下の力持ちとして、患者様の医療が適切に行われるように努力しています。
 次に、治療について紹介させて頂きます。放射線治療は“がん”を切らずに、がんとその周辺に放射線をあてて治す方法です。 機能と形態の温存が可能な治療法です。例えば、喉頭癌を手術すると声が出なくなりますが、放射線治療では声帯機能は温存されます。 琉大病院では、最新鋭の放射線治療装置やコンピュ−タ−を用いて、正確な線量を病気の部分に正しく照射する事が可能です。すなわち、癌細胞に必要な放射線量をあて、正常な組織の障害を少なくします。副作用が少なくて、良く治るわけです。現在、放射線治療は急速に進歩し手術に代わる治療法の第一選択肢となっているがんも多くあります。放射線治療部門では、産婦人科、耳鼻科、口腔外科などと定期的にカンファレンスを持ち、患者様にとっての最適な治療法について検討し、その結果を患者様に知らせて、いわゆるインフォームド・コンセントを得てから治療を開始しています。「放射線治療を行うと髪の毛が抜けますか?」と良く患者様から質問を受けます。それは違います。放射線をあてた部位の髪の毛は抜けますが、あてて無い部位は抜けません。放射線治療と併用して行われる化学療法(抗癌剤)では、髪の毛が抜けることがあります。
 IVRとはインターベンショナルラジオロジーの略です。心臓やその他の比較的太い血管にカテーテルを挿入して、治療を行います。動脈硬化などで細くなった血管を広げたり、血管内部にステント(金属などで作られた管状のもの)を挿入したり、出血している部位にコイルなどを詰めて止血したり、癌を栄養している血管から抗癌剤を持続的に注入したりします。その他に狭くなった気道、食道あるいは胆管を拡張したりもします。この治療法は手術室では無く、放射線部の血管造影室あるいはX線透視室で行われ、麻酔は殆ど使用されません。患者様には侵襲が少ない治療法です。
 非密封放射線治療は放射性ヨード(I-131)が封入されたカプセルを一回だけ内服する治療です。甲状腺癌が転移したり、癌が残っているときに行われる治療法です。比較的大量の放射性物質を服用するために、患者様には効果がありますが、一般の人や我々医療従事者への放射線被曝をできる限り少なくするために、専用の部屋に5日間入院して頂きます。入院して3日間は部屋から出られません。甲状腺機能亢進症の治療にも放射性ヨードが使われますが、その量が少ないために、外来で治療します。治療はカプセルを1回飲むだけです。
 最後に、我々スタッフ一同は患者様のためになる医療を行うべき毎日努力をしていますが、何かと行届かない点も多数あると存じます。その際には、お気軽にご叱責のほどお願い申し上げます。

(放射線部長 村山貞之、副部長 勝山直文)


 



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