平成14年10月31日

     University Hospital University of the Ryukyus          

琉大病院 HOTLINE 第22号

琉球大学医学部附属病院の患者様・職員のための情報誌

 

 

琉大病院と卒後研修

 昭和56年4月に琉球大学医学部医学科が第1期生を受け入れて以来早くも21年が経過し、本年3月には第17期の卒業生を送り出しました。卒業生の大多数が医師国家試験に合格し、これまでに琉球大学医学部出身の医師数は1570名を数えております。毎年卒業生の約半数は本土に帰りますが、残りの半数は沖縄県で卒後研修を受け県内各地の病院・診療所で日常診療に携わり、広く地域医療に貢献しております。
 卒業生の同窓会誌「南風」の調査によりますと、琉球大学医学部出身の医師の数はすでに沖縄県内の総医師数の約30%を占め、女性の医師数は県全体の女医さんの50%に達したとのことであります。これまで医療現場で活躍する多数の医師を送り出した医学部の教官の1人として、誠に喜ばしくまた今後の一層の励みになるところであります。
 このように毎年多くの医師が誕生致しますが、ご存じのように卒業生の多くは臨床医学の基本となる知識・技術を修得すべく卒後の臨床研修を経て、一人前の医師に育って行きます。卒業直後の2年間はいわゆる初期研修であり、この間は単に医学的知識・技術の修得だけでなく、多くの先輩医師と寝食を共にし、指導医の下に患者様への接し方、望ましいインフォームドコンセントのとり方、上司との対応などを学ぶ時期であり、人間性豊かな医師としての人格が形成される大変重要な期間であります。医師としての生涯学習のスタートである初期研修の過ごし方によって、医療人としての将来が大きく左右されると言っても過言ではありません。
 我が琉球大学附属病院では、毎年約60名の研修医が学びますが、その最大のメリットは本県唯一の特定機能病院として多くの診療科で常に最新の知識や技術に接することが出来ることであります。また将来研修医が希望する専門の科以外に、複数の診療科をローテートする研修プログラムを採用して幅広い知識の修得を目指しております。
 さて、今日の日本の医学教育制度では、医学生の時期には採血・点滴などの手技的なトレーニングを受ける機会が少なく、病棟ではデビューしたての研修医が患者様を相手にその大部分を担い孤軍奮闘致します。時には失敗を繰り返し、指導医、看護師、患者様から注意されることもありますが、ある時にはやさしい患者様から適切な採血の部位を指摘され、感謝したくなるほほえましい光景も見られます。その他消毒・処置のやり方等大勢の患者様に対応して、研修医諸君の基本的な知識・手技は短期間で急速に上達致します。患者様には研修医の医療行為が時に煩わしく感じられることと思いますが、すべての尊敬すべきトップの指導医がかつて育った道であり、彼らを育てることは将来の日本の医療を改善するものであり、何卒暖かい目で見て頂ければとお願い申し上げます。さらに研修医諸君の1日は外来診療、検査、手術、データの整理、カルテの記載等夜遅くまで続き、多忙を極める初期研修の2年間であります。このような2年間の初期研修を経て、琉大病院の多くの研修医は各診療科で自分の将来希望する専門分野に所属し、診療科や関連病院でさらに多くの症例を経験して各分野の専門医、指導医を目指し、また学位(医学博士)取得のために研究を続けます。
 昨今の我が国は改革の合唱で満ちており、この卒後初期研修についても平成16年4月から新しい研修医制度が導入されようとしております。新制度では各方面の思惑も垣間見られますが、肝心の現場の研修医諸君ならびにこれから研修を受ける医学部学生諸君の意見が取り入れていないのは極めて残念なことであります。いずれにしても若い研修医諸君は我が国の次世代の医療の中核を担う医師であり、彼らの卒後研修の意義は極めて大であり、実りある研修制度が確立されることを心から願うものであります。

(病院長 古謝景春)





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