脳神経外科とは? 最近の新しい治療法について

 

 脳神経外科は、一口で簡単に言いますと、脳・脊髄に起こる種々の疾患を手術で治す科です。手術は、顕微鏡を用いたり、血管内にカテーテルを入れたり、内視鏡等を使って行います。腫瘍、血管障害、外傷、脊椎・脊髄疾患、小児水頭症等の疾患があります。次のような症状がある方が当科での治療の対象となります。頭痛、頭重感、頚部痛、手または足の麻痺、顔の麻痺、ろれつ難、めまい、ふらふら感、手または足のしびれや痛み、けいれん、意識がなくなる等の症状があって困っている方は、脳神経外科を一度受診することをおすすめします。

 近年の脳神経外科診療は、新しい検査方法や治療方法が急速に開発されており、当院でも行っています。例えば脳動脈瘤(血管にできたコブ)が破裂した場合、クモ膜下出血を起こし、生命に危険を及ぼす疾患です。従来、この病気に対しては、頭の皮を切り骨を開けて、直接、動脈瘤をクリッピングする方法(開頭術)しかありませんでした。クリッピングとは、動脈瘤の入り口を洗濯バサミのようなクリップで閉じて、動脈瘤をつぶす方法です。しかし、ここ数年の間に、頭を切らないで治療できる方法(血管内手術)が開発されました。その方法は、足の付け根にある動脈の中から細いクダ(カテーテル)を入れて、さらにこのクダを動脈瘤の中に入れます。このクダからコイル(プラチナという金属でできた細い糸のようなもの)を入れて、動脈瘤を中から詰めていく方法です。開頭術が血管の外から動脈瘤をつぶすのに対して、血管内手術は血管の中からつぶす治療法です。これは、からだにやさしい治療であり、術後の回復も速く、入院期間も短くなります。このような治療もカテーテルやコイルの開発とカテーテル操作の技術向上で可能となりました。

 また脳梗塞の原因として、頭の中の血管や頸部の血管が狭くなった結果、血液が脳へうまく流れなくなったり、また、血栓(血のかたまり)が生じて、これが脳の重要なところへ行く血管を詰めることがあります。従来は、頸部の血管の狭い部分を、首の皮を切って、直接、血管を見て血栓や肥厚した内膜を除去(内膜剥離術)する方法がありました。しかし、最近は、ステントという金属の筒を用いて、首を切らずに血管の中から狭くなったところを広げることが可能となりました。この方法も、局所麻酔(歯を抜く時に行う麻酔と同じです)で治療が可能であり、からだにやさしい治療です。しかし、まだ長期成績がわかっていないという欠点がありますが、他の内臓の病気をもっている場合や高齢で手術が困難な場合には非常に有効な治療方法であります。この様な治療が行えるようになったのは、脳の血管を見る装置が非常によくなったこともあります。当院では、沖縄県でははじめての脳の血管を3次元に観察できる装置が導入されているためでもあります。

 脳腫瘍については、治療が最も難しいといわれている神経膠腫の治療にも精力的に取り組んでいます。脳という高度な機能を持った臓器に発生するわけですから、したたかな腫瘍といえます。手術で摘出すればよいという簡単な病気ではありません。腫瘍の性質が個人個人によって違っていますので、その腫瘍の性質に合った理論的で、合理的、しかも放射線治療、化学療法、免疫療法をうまく組み合わせて集中的な治療をしています。これには腫瘍の性質を見極め、それに合った治療法を推進できる各専門家からなるチーム医療で治療をしています。その他の疾患も、全力で診療にあたっています。何かお困りのことがありましたら、気軽に脳神経外科にご相談下さい。

            (病棟医長 原国 毅)

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より安全な輸血をめざす

 

 “輸血”という言葉には、マスコミなどでしばしば報道されていますように“医療事故=輸血ミス”をイメージされる方が多いと思います。しかし“輸血”は患者様が病気になり、御自身の血液の成分やその機能が低下したような場合や手術や事故などによって大量に出血されたような場合に、患者様の状態をよりよく改善し、十分な治療が受けられるようにするためにたいへん重要な医療行為です。

 琉球大学附属病院の輸血部には2名の医師、3名の臨床検査技師、1名の看護婦さんがいます。毎日、輸血ミスが起こらないように、また安全な輸血用の血液を患者様に提供できるように専念しています。

 近頃、輸血部の仕事として、“自己血輸血”が増えています。“自己血輸血”は、大きな手術が計画されている患者様からあらかじめ必要な量の血液を採取して病院で保存しておき、手術で輸血が必要になった時に保存しておいた御自身の血液を輸血する方法です。御自身の血液を再び身体に戻す訳ですから、医学的には最も安全な方法だといえます。

 また輸血部では、これまで夜間や休日に、急ぎ輸血が必要となった場合には、電話で臨床検査技師を呼び出す体制でしたが、病院に到着するまでにどうしても時間がかかりました。どんな場合でも、直ちに輸血ができるように、今年の4月からは専門的な教育を受けた臨床検査技師が夜間、休日も含め、24時間待機するようにしました。これによって“より安全な輸血”がいつでも患者様に提供できるようになりました。また白血病などの患者様には、骨髄移植に代わる治療方法として注目されています“臍帯血移植”も今年に入ってから本院で実施できるようになりました。この治療でも、輸血部が血液の保存や管理を担当しています。

 10月からは、輸血部に新しいコンピュータ・システムが動き始めます。患者様の血液型の登録や輸血される血液の登録など、“より安全な輸血“を管理できるコンピュータ・システムです。

 今後ともなお一層、“安全な輸血”ができるように努力していきたいと職員一同、思いを新たにしているところです。

                  (輸血部)

 



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