第11回日本性機能学会西部総会

 平成12年(2000年)10月13日(金)〜14日(土)、沖縄郵便貯金会館を会場にして、第11回日本性機能学会学術総会(全国学会)が開催されました。今回の学会には、西日本地域の学会である第11回日本性機能学会西部総会も同時に併せて開催しました(10月13日(金)午後)ので、そのトピックスなどをお知らせします。

 第11回西部総会は、シンポジウム氈u東アジア各国におけるバイアグラ使用と勃起障害の治療:現状と課題と展望」という企画で行われ、タイ、台湾、韓国、中国から第一線で活躍している医師・研究者が招かれ、日本のこの領域を代表する医師・研究者との間で、熱心な討論がくりひろげられました。 御存知のようにバイアグラは男子の陰茎の勃起障害の治療薬剤として最近開発された話題のクスリです。勃起障害はインポテンス(インポテンツ)とこれまで呼ばれていましたが、最近では英語の erectile dysfunction の頭文字をとって“ED”という呼称が用いられています。

 ED(インポテンス)は、セックスと直接結びつくことですから、これまでは大抵の人は口に出して訴えることもせず、治療を求めて医師を訪ねることも、余程のことがないかぎりありませんでした。ところが話題のバイアグラが治療薬として開発されると、これまで水面 下にいたED(インポテンス)に悩む人々が、徐々に治療を求めて病院を受診するようになってきています。ところで、性に対する意識や行動は、その国の社会的、文化的な背景や価値観などで大きく左右され、影響を受けます。今回の学会では、東アジア各国におけるこれらの複雑な問題をふまえて、EDの治療の現状を把握し、どのような問題点があるかを十分に知り、それに対してどのような対応を医学的、心理学的に行って行くべきかを議論して、21世紀へ向けたED治療の展開を考えるという大切な課題をもつシンポジウムで、2人の座長の見事な司会のもとに、興味あるディスカッションが繰り広げられました。

 司会にあたられた座長は、ED治療の優れた専門家である小川由英先生(琉球大学医学部泌尿器科学教授、日本性機能学会評議員)と丸茂 健先生(慶応義塾大学医学部泌尿器科学助教授、日本性機能学会幹事長)の二方です。シンポジストには、タイ国からチュラロンコン大学医学部外科泌尿器科のアピチャット・コンカナンド教授、台湾から国立台湾大学医学院泌尿器科の謝 汝敦助教授、韓国から延世大学医学部泌尿器科の李 雄助教授、中国から昆明医学院男性学科の沈 明教授が招かれ、日本からは日本性機能学会理事で原三信病院泌尿器科の武井実根雄部長が代表で発表しました。

 バイアグラの登場で、どの国でも糖尿病や動脈硬化や加齢に伴うEDなどの患者が受診するようになっています。そのため各国ともED受診者の年齢は中高年層にピークが移りました。これまでは新婚インポテンスなど若い層の患者が目立っていたのですが、最近では随分おもむきが変わってきています。歳をとってインポテンスになるのは仕方のない自然現象だとあきらめていた人々が、バイアグラを求めて病院にきはじめています。

 糖尿病や高血圧など身体の病気が基でEDになった人や年齢とともにEDになっている人々にとっては、バイアグラの登場は福音であることを示す結果 ですが、これに伴い女性サイドの方の問題もクローズアップされてきています。今回のシンポジウムでも、女性の中高年者のEDに関する考え方の修正が重要な問題であることが、クローズアップされました。

 また、バイアグラの副作用について、とりわけ狭心症や心筋梗塞の疑われる人々や狭心症の治療薬と併用する場合には、生命の危険性を伴うことが強調されました。インターネットなどでバイアグラを自分で手に入れて使用するのは大変あぶないことです。必ず専門医を受診して、これらの病気をチェックすることが重要であることもクローズアップされました。

 EDでない人が、バイアグラを精力増強剤として使用するのは、間違っています。性欲は強くなりませんし、陰茎勃起が異常に続いてペニスがダメになってしまう持続勃起という恐ろしい状態になる危険性があることも、報告されました。 韓国や中国、タイなどでは、これまで漢方薬や、鍼灸など東洋医学的治療や、食事療法などでEDの治療がなされてきましたが、バイアグラの登場でもなお、これら伝統的な治療法は、すたれることはなく続いているようです。

 東アジアの国々では、バイアグラはED患者のQOLを高め人生によろこびと生き甲斐感を与えています。増々EDに対する理解を深め人々に安全にバイアグラを使用することが、21世紀の課題です。

 第11回日本性機能学会西部総会のシンポジウムでは、多くの実りある成果 をあげることができました。 ここに感謝の気持ちをこめて、皆様にお知らせ致します。

(第11回日本性機能学会西部総会会長・医学部精神衛生学教授 石津 宏)







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