平成19年2月10日(土)に、重粒子線がん治療フロンティア研究会主催にて、シンポジウム『がん治療の新しい展開』が開催されました。 そのシンポジウムに向けて、当琉球大学医学部附属放射線科 診療科長兼教授である村山貞之の、重粒子がん治療についての寄稿が、3日(土)、6日(火)の二回に分けて、琉球新報に掲載されました。
沖縄県への重粒子線治療センターの誘致に向けて、琉球大学附属病院も側面から応援していきます。 |
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−放射線の副作用を解消−
−正常組織に影響与えず− |

−診療科長兼教授−
村山 貞之 |
日本人の死亡原因の一位が、がんであることは、みなさまもご承知のことと思います。そのがんの中でも、日本人の民族病とも言われた胃がんの死亡率は減少傾向にあり、肺がん・肝臓がん・大腸がん、乳がんといったがんが増加してきています。 また、沖縄では、子宮がん、耳鼻科領域のがんが多いのも特徴です。 がんの原因は明らかではありませんが、日々体のなかで行われている細胞分裂の途中で、必要な遺伝子にさまざまな理由で傷がつき、できそこないの細胞が生じることからがんが始まることが分かってきました。 この現象は、年をとっていくと起こりやすくなるので、がんは加齢現象の一つともいえるのです。ですから、高齢化社会の今、がんが増えてきているのは当然なことでもあります。 |
さて、がんの治療には大きく分けて、手術・放射線治療・抗がん剤治療があることをご存知かと思います。その中で私の専門領域である放射線治療は、最近非常に進化してきています。 がんについて昔から叫ばれているのは、早期発見・早期治療です。これは今でも変わりませんが、早期に見つかったがんは手術が第一選択≠ナ、悪いところを取ってしまえば治る可能性が非常に高いわけです。 ところが、最近は肺がん・子宮がん・喉頭がんなどでは早期であれば放射線治療だけで治ってしまうことが分かってきており、早期がん治療の選択肢の幅が広がってきています。
琉大病院でも多数の患者さんが放射線治療を受けていらっしゃいますが、その数は年々増えてきています。来年夏(平成20年夏頃)には、最新鋭の装置の導入が決まっておりますので、期待してください。 放射線治療の良さは、がんを切り取ってしまわず、ゆっくりゆっくりがんだけ消してしまう治療法ということで、体の機能を完全に保てます。 例えば、喉頭がんで手術をすれば、正常な状態の声を失いますが、放射線治療で治れば、声は元通りです。しかし、放射線は正常の組織にも影響があるため、少しずつしか照射することができないのが難点で、通常の方法では治療期間が一ヶ月以上かかってしまいます。また、正常組織に対する副作用があり、喉頭がんでは、強いのどの炎症が現れ、のどが痛くてご飯が食べにくかったりします。もちろんこの副作用は治療が終了するとゆっくりではあるものの完全に治るのですが。
最近、この放射線治療の欠点が解消される夢の治療法が発明されました。それが、重粒子線治療です。日本で開発された装置を用い、がん以外の組織にほとんど影響を与えずにピンポイントで治療できる治療法です。長年研究がなされ、昨年までに3,000人の治療が行われました。 |
| 琉球新報 2007年2月3日(土)夕刊掲載 |
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−日本で開発− −設置2ヶ所のみ− |
今までの放射線のエネルギーはX線、電子線といったものなのですが、この重粒子線は炭素線で、炭素イオン原子を高速近くまで加速して患部に当てます。重粒子線は、がんの周囲にほとんど影響を与えずピンポイントでがんだけに当たってがんをやっつけてしまう画期的な治療法です。 方法は今までの放射線治療と同じで、体の外からがんに向かって当てるのですが、重粒子の特徴で、がんを取り囲む前後左右の正常組織にはほとんど影響が出ません。このことは、がんだけに強いエネルギーを与えられるという特徴につながるわけで、数回の照射でがんを退治できます。標準的な放射線治療は、30回も照射が必要なのに比べ、重粒子線治療はまるで手術のように悪いところを取り除いてしまうわけです。 では、この夢の重粒子線治療は、どこで受けることができるのでしょうか。残念ながら、沖縄にはまだこの装置を持っている施設はありません。 日本でも2ヶ所しかなく、千葉の放射線医学総合研究所(放医研)と兵庫県立粒子線医療センターでしか受けられません。
さきほど、重粒子線治療は最近の発明と申し上げましたが、放医研における装置の設置は1993年で、ここで長年の研究がなされ、現在高度先進医療として、適応のある早期がんの患者さんに対してこの治療が行われてきており、昨年3,000人目の治療が行われたところです。 現在の治療法ではなかなかうまくいかない骨肉腫や脳腫瘍などにも大きな効果があるといいます。この装置は日本で開発され、外国にはまだありません。非常に大掛かりな装置で、設置には莫大な費用がかかります。しかし、最近この装置のコンパクト版が作成され、今までよりは設置しやすくなりました。
これからは、重粒子線治療器を日本の他の地域に設置し、がん治療に生かしていく全国展開の時代になりました。私は、県民の皆さまの健康のためにぜひ沖縄にもこの装置を設置できたらと思っており、その可能性を模索している一人でもあります。 |
| 琉球新報 2007年2月6日(火)夕刊掲載 |