トピックス 製薬企業へのヒト組織提供 日本初の「琉球大学産業利用倫理審査委員会」による承認 〜難病に対する再生医療等製品の開発加速へ

 琉球大学からヒト組織を製薬企業に適切な形で提供できる体制を構築したことについて、2021年12月7日記者発表を行いました。
 再生医療の発展のためには、製薬企業がヒト組織(脂肪、臍帯、歯、骨髄等)を用いて開発する「再生医療等製品」の存在が欠かせません。新しい再生医療等製品が開発されることで、これまで治療が難しかった疾患の治療が可能になることが期待されています。しかし、これまで日本では企業が産業利用目的で国内の医療機関からヒト組織を入手し、利用することについてのルールが明確化されておらず、再生医療発展のための大きなハードルとなっていました。日本医療研究開発機構(AMED)からの委託を受け、当院形成外科清水雄介教授を中心に全学をあげてこのハードルの解決に取組みました。琉球大学は2020年7月に大学規則の改正と新規則の制定を行い、従来は難しかった「ヒト組織を産業利用目的で使用」することについて専門的に審査する役割 を持った委員会「産業利用倫理審査委員会」を設置しました。また同年10月には、琉球大学病院みらいバンクを設立。これらの取組みにより琉球大学からヒト組織を製薬企業に適切な形で提供できる体制を構築しました。今後、製薬企業はヒト組織を入手し易くなり、再生医療等製品の開発が加速することになります。
 実際の運用として2021年1月にロート製薬株式会社から琉球大学にヒト脂肪組織提供の依頼があり、同年2月に第1回となる琉球大学産業利用倫理審査委員会が開催されました。複数回の厳格な審査を経て、同年8月にヒト脂肪組織の提供が承認されました。同年11月には当院で脂肪吸引を行った患者さんから企業への提供に関する同意を得て、通常は廃棄される脂肪組織の一部を保存処理し、ロート製薬株式会社へ提供しました。
 このように琉球大学が適切な審査体制でヒト組織を製薬企業へ提供できる体制を構築したことで、日本全体の再生医療産業が大きく前進したといえます。これにより難病で困っている多くの患者さまに新しい治療手段を届ける可能性が広がります。現在はAMEDの支援の下、「琉球大学を起点としたヒト細胞原料供給体制の実装」として事業を継続しており、将来的には琉球大学からアジア諸国へもヒト組織を提供できる体制の構築を目指しています。

記者発表の様子:左から筒井正人 医学研究科長・医学部長、清水雄介 形成外科学講座 教授、大屋祐輔 琉球大学理事(病院担当)
記者発表の様子:左から筒井正人 医学研究科長・医学部長、
清水雄介 形成外科学講座 教授、大屋祐輔 琉球大学理事(病院担当)
説明を行う清水雄介 教授(併 みらいバンク長)
説明を行う清水雄介 教授
(併 みらいバンク長)