トピックス 減量・代謝改善手術の導入について

 肥満人口は近年全国的に増加傾向にあります。特に沖縄県は肥満率がトップクラスであり、肥満に関連した疾患での死因割合も全国上位となっています。
 肥満症治療の原則は、食事・運動・行動・薬物療法等の内科的治療ですが、残念ながら多くで長期的な体重減少を維持することが困難とされています。BMIが35を超える高度(病的)肥満症は特に減量治療に抵抗性であり合併症も重篤となります。
 肥満外科手術は長期的な体重減少と肥満関連疾患の改善を図れることが証明されている唯一の方法です。代謝障害、特に2型糖尿病への治療の有効性が近年証明され、減量・代謝改善手術と呼ばれるようになり、適応が軽・中等度の肥満患者にも期待されています。欧米では一般的な手術で、日本でも2014年に肥満手術の一つである「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」が保険収載されて以降、手術数は増加しています。
 術式には様々ありますが、「腹腔鏡下スリーブ状胃切除」では胃の約80%を切除しバナナ約1本分の細長い胃に形成(容積100ml程度)します。物理的に食事摂取量を減少させることで減量効果が期待できます。術後2年をピークに約30−40%の体重減少が見込めます。
 当科でもニーズに答えるべく昨年より減量・代謝改善手術の導入へ向け準備を進めてまいりました。導入にあたり、先行施設である大浜第一病院の稲嶺進先生にご指導いただきました。
 本年6月に当院第一例目の手術を合併症なく安全に行うことができました。術後10週の時点で術前より約20kg(17.5%)の減量に成功しました。これまで3例に施行しましたが、いずれも合併症なく安全に退院できました。減量効果のみならず、2型糖尿病合併患者が手術直後よりインスリンが不要になるという驚異的な効果も経験しました。

 減量・代謝改善手術の保険適応条件は以下のとおりです。
① 6ヶ月以上の内科治療でも効果が得られないBMI35以上の患者さんで、糖尿病・高血圧・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群の1つ以上を有する
② 6ヶ月以上の内科治療でも効果が得られないBMI32.5以上の患者さんで、コントロール不良な糖尿病を有しかつ高血圧・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上を有する

 対象年齢は18−65歳です。当院ではより安全な手術を行うために、術前2−3週間の内科的減量入院を行います。その後手術を行い、合併症なく経過した場合は術後約1週間で退院となります。
 減量・代謝改善手術は外科医単独での実施は困難であり、肥満に関連する様々な問題に対応するべく内科医、麻酔科医、精神科医、リハビリ医、管理栄養士、理学療法士等、多くの専門家の連携が必要です。当院でもチームを立ち上げ、毎月カンファレンスを行い様々な相談を行っております。

 本件に関するお問い合わせ・患者様のご相談は第一外科「減量・代謝外科外来」中村陽二医師までお願いいたします。