診療科の紹介

近藤毅 精神科神経科長

多様なうつ病への対応を目指して

 不安になったり、ふさぎこむ日々が続いたり、こころの病気にだけはかかりたくないと思っていらっしゃる方は多いでしょう。代表的疾患であるうつ病は5人に1人が生涯のうち一度はなる可能性のあるありふれた病気ですが、自身の気持ちの変化に気付くことは案外難しく、客観的なデータを示してくれると理解しやすいという声も聞かれます。また、うつ病には様々なタイプがあり、たとえば、双極性(うつと躁の両方の時期がある)や発達特性(自閉スペクトラム症や注意欠陥多動性障害)がある場合には、通常治療とは異なる対応が必要となります。
 琉球大学医学部附属病院・精神科神経科では、通常治療に抵抗性を示す多くの方々が紹介されてきます。現在、当科では、単極性と双極性のうつ病を鑑別する光トポグラフィー検査(非侵襲的に前頭葉活動をみる約20分の検査)を実施し、個人の気質・性格や発達特性を評価する総合的な心理検査を行い、多様なうつ病の鑑別診断に役立てています。治療においても、エビデンスに基づいた薬物療法(臨床精神神経薬理学研修施設認定)や各種精神療法(認知行動療法を含む)の個別化を図り、治療方針を考案しています。重症度の高い治療抵抗性うつ病には修正型電気けいれん療法(入院治療)を行い、高い寛解導入率を得ています。
 多様なうつ病の治療の他にも、当科では小児思春期専門外来を開設し、小児の発達障害、不安障害、精神病性障害への対応に取り組んでおり、当院の認知症疾患医療センターとの協働により高齢者の各種認知症疾患の相談・鑑別診断・治療対応に備えているほか、当院他科に入院されている患者さんの精神面のサポートを行うリエゾンチームも活動しています。
 今後も、老若男女を問わず、皆さまが受診しやすい身近な診療科となるよう、医局員一同努力を重ねていきたいと思います。


聴神経鞘腫(ちょうしんけいしょうしゅ)の手術

脳神経外科長 石内勝吾 助教 外間洋平

 脳神経外科であつかわれる疾患のなかに脳腫瘍があります。今回はそのうちのひとつ、聴神経鞘腫の手術治療について簡単に紹介したいと思います。聴神経鞘腫は、聴神経をつつむ鞘である神経鞘からでてくる良性腫瘍です。聴力低下や耳鳴り、めまい、ふらつきの精査で指摘されることがおおいです。生命中枢である脳幹部や、体幹のバランスを司る小脳を圧迫している大きなものは、特に手術の対象となります。腫瘍は顔面神経に近接し、変形させているものがほとんどであるため、手術中は神経モニタリングを併用し、機能温存に配慮した工夫を行っています。また、手術前にはCTやMRI画像を統合した3次元画像を作成し、開頭範囲や内耳道の掘削の程度の検証や、術野からみえる腫瘍、各種脳神経、動脈、静脈といった構造物の位置関係の把握に利用しています。最近は特殊な撮像条件を用いて、通常のMRIでは視認できないようなほどに変形している脳神経の可視化も試みています。手術は長時間に及び、適切な手術療法のためには、医師のみならず、手術看護師、手術室技師など医療従事者の方々の継続的な協力が必要不可欠です。患者さんが安心して治療が受けられるよう、これからも術前検討、チーム医療を推進し、安全な診療に努めていきたいと考えています。
3次元画像