顎変形症  あごの変形による悪いかみ合わせは歯の寿命を短くする
片岡恵一 歯科口腔外科助教  顎変形症とは、顎の変形による顔貌の非対称、近遠心的変形、上下的変形などの形態変化を伴い、咬み合わせや顔貌、発音などの問題を有するものの総称です。
 前歯部でうまくものが噛めないばかりでなく、発音や審美的な問題も有することがあります。また、大臼歯部(奥歯)の負担も大きく、当科での調査においても若年にも関わらず多くの歯が崩壊しているもしくは、失われている方が多く、歯の健康寿命が短いことが考えられます。正しくない上下の顎の位置で歯の治療をしても、歯への負担が変わらなければ、その歯を正しく機能させて長持ちさせることは難しいと考えられます。
 当科に来院している顎変形症の患者さんの8割は下顎(下あご)が出ていて受け口になっている下顎前突、2 割は、顎が左右にずれている顔面非対称、上顎(上あご)が出ている、もしくは下顎(下あご)が著しく小さいことに起因する上顎前突、上下の前歯が当たらずに奥歯でしか歯が接触していない開咬などと色々な種類の顎変形症の症状の患者さんが来院しています。
 原因は様々で、家族性に発現しやすいことが報告されているばかりでなく、舌などの周囲軟組織により成長が誘導される場合や、思春期成長以降での身長の著しい増加に伴い、下顎骨(下あご)の成長が促進することにより発現する事もあリます。
 琉球大学医学部附属病院では、子供の頃(小学校就学前後)に咬み合わせ、顎の成長や舌の動きや発音、舌小帯の長さなどの診察を行い、将来的に顎の手術を少しでも回避できるように心がけています。 しかしながら成人に近づき、顎を切る手術を必要とする外科的矯正治療の適応になった場合は、検査にて専用の機械での咬み合わせの際の顎の動きや筋肉の強さの計測や、レントゲン、歯の模型などで診断を行ったのちに、術前に歯科矯正治療を行い、全身麻酔下にて上顎骨(上あご)および下顎骨(下あご)のいずれか、もしくは両方の顎を切る手術を行い、正常な咬み合わせをできる位置に顎を動かします。その後、術後の矯正治療により歯並びの仕上げを行い、手術後の顎の位置の後戻りがないことを確認し治療が終了します。矯正治療の期間が2?3年程度、手術のための入院が2週間程度必要となります。
 琉球大学医学部附属病院は、顎変形症の外科的矯正歯科治療が保険適用される医療機関です。もし、ご自身、御身内、お知り合いなどで気になる方がいらっしゃれば、大学病院への受診をお勧めいたします。