琉球大学医学部附属病院 副院長・第一外科長 西巻 正がんと告げられたら?正しい知識で賢い患者になりましょう。

 “がん”ですと医師から告げられたら、ほとんどの人が衝撃を受けてしばらく抑うつ状態になります。でも、「がん告知」イコール「死の宣告」でしょうか?答えはNOです。にも拘わらず、“がん”と言われて怪しげな民間療法にすがったり、偏った解釈で書かれた書籍を鵜呑みにして治癒する機会を逸してしまう人達がいます。確かに“がん”は深刻な病気です。ですが、治療法が飛躍的に進歩した現在、とても治り易くなった“がん”も少なくありません。例えば甲状腺がん、精巣がん、皮膚がんなどは約90%の患者が治癒します。その一方で、胆道がんや膵臓がんは依然として難治です。このように、“がん”の治り易さは種類により大きくばらつきますが、同じ“がん”でも進行段階によって大きな違いがあります。

 その関係を示したのが図1です。早期の段階で“がん”が見つかれば、簡単な治療でほとんどの患者が治ります。しかもかかる費用も少ない。ただ早期がんは診断が難しい。つまり、十分な経験と診断力を持った専門医でないと見逃されてしまうということです。
 それでは進行がんの場合はどうか?進行がんの診断は容易です。が、高度な技量を持つ専門医でないと治療は困難で、しかも早期がんと対照的に治り難い。 さらには高額な費用がかかります。つまり、“がん”という病気の診断・治療には早期がんであれ、進行がんであれ、多くの専門医がそろっているがん専門病院が最適ということです。

 現在、沖縄県には“がん”治療に特化した「がんセンター病院」はありません。しかし、琉大病院には高い診断能力を持つ病理医、内視鏡医、放射線診断医、そして“がん”治療の3大柱である手術(+内視鏡治療)、薬物療法、放射線療法の専門医、さらには“がん”診療の専門的知識と技術をもつ看護師、薬剤師をはじめとする様々なコメディカルが多くいます。このような多職種がチームを組むことで初めて“がん”を治療することが可能になります。琉大病院は沖縄県における「がん診療連携拠点病院」なのです。
 “がん”治療の鍵は早期発見・早期治療と言っても過言ではありません。まず検診を必ず受けること、早期がんの発見はここから始まります。そして“がん”と診断されたら正しい情報を集めることです。今では患者向けに分かりやすく解説された治療ガイドラインが多くの癌関連学会から出され、インターネット等で簡単に入手できます。

図1 がんの進行段階による医療の特徴

念のため、別の専門医に意見を求める「セカンドオピニオン」も普及しています。治療に伴う費用や就労の心配事があれば、琉大病院内の「がん相談支援センター」で話を聞くこともできます。最後は自己責任で治療法の選択を行って結構ですが、やはり“がん”治療専門医の意見は重要です。彼らは“がん”治療のプロだからです。
 “がん”と告げられたら、正しい知識に基づいて正しく判断する賢い“がん”患者になりましょう。琉大病院はそのお手伝いをしています。