脂肪を用いた最先端の「再生医療」

 琉球大学医学部附属病院形成外科では「再生医療」の研究を積極的に推進しています。「再生医療」とは病気やケガで失われた身体機能を取り戻すために、幹細胞等を利用して組織や臓器を再生する治療です。その中心となる幹細胞とは、さまざまな組織や臓器の素となる細胞です。この幹細胞を上手に利用することで、今まで治療が難しかった疾患を治療できる可能性が大きく広がると考えられています。現在、世界中の研究機関が再生治療の研究に大きく力を入れ始めています。
 近年、幹細胞の中で特に注目されているのが、脂肪の中に存在する「脂肪組織由来幹細胞」です。脂肪組織由来幹細胞は脂肪だけではなく骨、軟骨、血管、筋肉といった色々な組織に変化する能力を有しています。また、人体に広く存在する脂肪から簡単に採取でき、十分な量を確保しやすいことから、幹細胞治療薬として実用化できる可能性が高いと考えられています。更に、現代人は過食傾向にあり、体に余剰の脂肪を貯めていることも多く、この余剰脂肪から採取された脂肪組織由来幹細胞を活用し、さまざまな疾患に対する再生治療技術を確立することが望まれています。
 琉球大学医学部附属病院形成外科は2015年3月に新設されました。形成外科の脂肪採取技術と琉球大学医学部が保有する日本最高レベルの細胞培養加工施設を生かし、日本の再生医療をリードする研究を進めていきます。2016年3月には、国内初となる培養した脂肪組織由来幹細胞移植による顔面陥凹性病変の治療を実施しました。脂肪組織由来幹細胞が安全で、さまざまな病気の治療に有効であることが少しずつ確認されていますが、その詳細なメカニズムは未だに解明されていません。このメカニズムを解き明かし、現在では治療が困難とされている疾患の治療にも役立てることが期待されます。沖縄県唯一の医育機関である琉球大学から、最先端の「再生医療」を日本全国に発信していきたいと思います。
 この件に関する問合せは、形成外科 外来(火・木)098-895-3331(代表)へお願いします。