あなたの「疲れやすい」「すぐ息が上がる」は加齢ではなく、心臓弁膜症かもしれません!

 TAVI(経カテーテル大動脈弁治療)とは、胸を開くことなく、カテーテルで人工弁を留置する、重症大動脈狭窄症に対する新しい治療法です。
 大動脈弁狭窄症とは心臓弁膜症のひとつで、大動脈弁の開きが悪くなり(古びた扉をイメージして下さい)、心臓から全身に十分な血液が送り出されなくなる病気です。症状が進むと息切れ、疲れやすさなどの症状が現れ、重症になると失神や突然死に至る可能性があります。この病気の患者さんは、ちょっとした風邪やインフルエンザにかかっても命にかかわることがあります。
 かつては、先天性のものや、リウマチ熱の後遺症などの原因が多かったのですが、近年は、加齢による動脈硬化などで弁が硬くなる大動脈弁狭窄症が増えています。高齢化が進むなかで、患者さんの数は年々増加していますが、ジワジワ進行する病気なので、気づきにくく、「年だから」の一言で受診に至らない患者さんも数多くいます。
 薬の治療では完全に治すことができず、これまで唯一の治療法は、開胸して行う大動脈弁置換術(胸を開いて人工弁に取り替える)が一般的です。しかし体への負担が大きく、高齢等で体力が低下している患者さんには適用できません。大動脈弁置換術を受けなかった場合、症状がでてから2年以内に約半数の患者さんが亡くなると言われています。症状出現は80歳頃と高齢の方が多く、体力の低下やその他の病気のために手術が困難な方が少なくありません。
 TAVIはこのような手術困難な患者さんにとって新しい治療の選択肢となります。開胸せず、心臓を止めず治療を行うので患者さんへの負担が少ないのが特徴です。この治療法は、太ももの付け根にある大腿動脈、もしくは肋骨の間からカテーテルを入れ、新たな人工弁(生体弁)を心臓まで運び、うまく働かなくなった大動脈弁の内側に留置します。一般的な開胸手術に比べ傷が小さくすみ、入院期間が短いことで患者さんの精神的・身体的負担を減らすことができます。TAVIは平成25年10月に日本で保険適応となり、現在まで全国で3000例以上施行されていますが、平均年齢85歳の高齢にもかかわらず、とても良好な成績を残しています
 TAVIの治療が行える施設の基準は、関連学会の協議会が定める厳格な基準があります。琉球大学医学部附属病院はその基準を満たす県内で唯一の施設であり、平成27年6月に施設認定され、平成29年1月現在までに34人の方に治療を行い、全例の手技に成功しています。
 TAVIに関するお問い合わせは、第三内科岩淵成志あるいは第二外科永野貴昭宛の紹介状を、本院医療福祉支援センター(シエント)098-895-1371、FAX 098-895-1498へお願いします。