このたび琉球大学医学部附属病院「外来化学療法室」専任医師として赴任 いたしました�煖ｴ秀徳（たかはしひでのり）と申します。長野県生まれの関西 育ちです。早速ですが、この「外来化学療法室」って、皆さまご存知でしょうか？
　21世紀に入り、画期的な薬剤（＝化学療法）が次々と開発され、がんや自己 免疫疾患のようなさまざまな難病も、いまでは慢性疾患の一つとして日常生活 の中で共存可能な病気になってきました。副作用対策も大きく進歩し、以前は 入院を必要とした多くの抗がん剤治療も、外来通院で実施可能な時代となりま した。そしてこのように、治療中でも日常生活（生活の質＝QOL：Quality of Life と呼ばれます）が保たれることは、実はそれ自体が治療効果にもつながる！ということが近年の 研究で明らかになってきています。
　一方で、外来通院という環境で専門的な治療を安全に提供し、かつ患者さんのQOL、すなわち日常 生活をサポートしていくためには、病院側にはますます高度な知識と技能、特に“先の変化を予測して対応 するための仕組み”が求められることになります。この実現を目指しているのが「外来化学療法室」の 役割です。
　私はこれまで “進行がん治療” を専門とするべく研鑽を積んで参りました。その契機となったのは、 医学生時代に行ったインドカルカッタのマザーテレサの家でのボランティア体験、そして研修医時代、 救命救急センターに搬送された末期がん患者さんの看取りを担当させて頂いたことでした。がん医療に おける緩和ケア・QOLへの視点の重要性を痛感し、まずは最先端のがん治療を学ぶべく、国立がん研究 センター中央病院の門を叩きました。そこで5年以上にわたる抗がん剤や放射線治療、緩和医療などの 進行がん治療に関する専門研修を受けました。がん治療認定医、そして念願の緩和医療専門医になって からは、退院後のがん患者さんの治療と生活を支えるための地域医療・在宅医療に従事しながら、最近は九州の大学院でQOLやがん免疫に関する臨床および基礎研究を行っていました。
　沖縄県唯一の“都道府県がん診療連携拠点病院”である当院の「外来化学療法室」は、全国でも数少な いがん化学療法看護認定看護師が専従し、がん専門薬剤師の率いる薬剤部に、大学病院ならではの全 診療科によるサポートが得られる、という大変充実した体制になっています。これまでがん専門病院・ 緩和ケア病棟・地域の診療所という「3つの場」において、多くの患者さんから学ばせて頂いたことを 生かして、病院スタッフの皆様のご指導の下、外来化学療法室チームの一員として少しでも皆様のお役 に立てますよう、全力を尽くして参ります。どうぞ宜しくお願い申し上げます。