琉球大学医学部附属病院長 第二外科長 國吉 幸男
琉球大学医学部附属病院長
第二外科長

國吉 幸男

特集:病院新体制

今必要なのは、地域での専門医療

国立大学の法人化に伴い、大学附属病院も大きく変貌してきました。 従来、大学病院の使命として、1)研究、2)教育、3)診療、の3本柱が謳われ、護送船団方式で国の庇護のもと研究、教育、診療が行われていました。しかしながら、法人化後は大学病院の裁量の一部を認める代わりに、その経費負担をほとんど自ら行う原則独立採算制がその大きな骨子となっています。従って、大学の重要な使命に、4)健全な大学病院経営が付け加えられています。むしろ、この部分の比重が増してきています。

しかしながら、地域における大学病院の果たす役割は従来より変わるものではありません。 特に島嶼県である沖縄県における琉球大学医学部附属病院の役割は、先進、高度医療を含めて 沖縄県内で完結する“完結型医療”が目標です。その目標に向けた多くの関係者のご努力がたゆまなく続けられ、専門医育成を行いながら質の高い優れた高度医療が実施されています。沖縄県の医師数は復帰当時より最近まで常時最下位でした。しかし、ここ数年は急速に増加し現在では全国でも中位以上まで増加してきています。その増加の大きな要因は、毎年の琉球大学医学部の卒業生です。県内の総医師数は3,200名余ですが、現在は、その半分以上を琉大の卒業生が占めるに至っています。しかしながら、本県では地域における専門医師の充足度において はまだ十分であるとは言えません。特に、離島、僻地では不足している専門分野が多く、それらの地域から中央に専門医受診目的に出かけてきている現状があります。
国全体をみても同様であり、医師数が増加しているにも関わらず専門医師の遍在化現象が生じ、都市部に多くの専門医が遍在しており、このことが医療を受ける機会の不平等を引き起こしています。国はこの遍在状況に対応すべく、新しい専門医制度を構築しその専門医師配置調整までを行う施策が現在進行中ですが、それの実効性や、それが奏功するまでにまだ期間を要する等多くの懸念があります。そのため地域医療における大学病院の重要性が以前にもまして大きくなってきています。そして、専門医教育が行われ、また質の高い医療を提供出来る人材を教育・育成している大学病院の地域医療における役割を捉え直し、量から質へ変換し、地域における専門医療の充実との観点から更に地域医療に貢献すべきであると考えています。現実に地域住民から専門医の派遣要請が多く、それに対して無理なく応えうるのも大学病院の地域医療へ果たす使命の一つではないかと考えています。