琉球大学医学部附属病院 看護部長 川満 幸子
琉球大学医学部附属病院
看護部長

川満 幸子

看護師はチーム医療のキーパーソン

 業務担当として病院長補佐をしています川満です。今回はチーム医療における看護の役割と取り組みについてご紹介します。

 チーム医療とは、医療に従事する各専門職が連携・協働して、それぞれの専門性を活かし、患者さんの状況に適確に対応した医療サービスを提供することであると言われています。

 昨今、医療現場では、高齢化や医療の高度化・複雑化に伴い、高度で専門的な治療の提供と併せて、療養生活の質を向上させるための専門的なケアの必要性が高まっています。一方では、その業務の増大により医療従事者の苛酷な労働環境も切実な問題です。こうした背景から、各医療スタッフ間の協力がこれまでにも増して重要となり、医療を安全かつ効率的に提供するために、「チーム医療」の重要性が強調されるようになってきました。

 本院でも横断的な医療チームが組織され、感染予防、皮膚や排泄のケア、痛みを和らげる緩和ケア、外来での化学療法、栄養や呼吸のサポート、糖尿病やエイズの療養指導、円滑な退院支援等、専門的な診療支援が行われています。これらのチームでは、各専門職と共にそれぞれの領域でより水準の高い看護ケアが提供できる認定看護師や専任看護師(スペシャリストまたはエキスパート)が勢力的に活躍しています。他方、多くの看護師(ジェネラリスト)は、診察・治療に関連する業務から患者さんの療養生活の支援に至る幅広い業務を行っていますが、チーム医療においては患者さんと多職種間を仲介する役割を担います。また、特にジェネラリストの看護師は、患者さんの生活行動を援助する観点からチーム医療にかかわることで看護の役割を発揮することとなります。そのためには、多職種を取り持つ調整役(コーディネーター)としての役割発揮やコミュニケーションスキルを向上させることが必要です。

 看護部では、チーム医療を推進する一環として「インフォームドコンセント(説明と同意)」と「カンファレンス」を充実させる取り組みを行っています。インフォームドコンセントでは、病状や治療等の説明の際、看護師が必ず同席する工夫をし、患者さんの意志決定を支援します。また、カンファレンスを効果的に実施できるよう実施基準を作り、評価や意見交換で患者さんの理解を深め、最も適した支援方法が検討できるようにしています。このような取り組みの中心に患者さん・ご家族がチームの一員としてかかわることが非常に重要であると考えています。些細なことでもどうぞ気軽に看護師へお声かけ下さい。看護師は、チーム全体で最良の医療サービスが提供できるよう各職種間を「つなぐ」役割を果たします。

 このようにチーム医療において看護師は、診療の補助業務と療養上の世話を担い得ることから「チーム医療のキーパーソン」としての期待が寄せられています。厚生労働省では、「チーム医療の推進に関する検討会」を発足し、質の高い医療の実現に向けて、さらに各医療スタッフの専門性を向上させ、業務範囲や役割を拡大する検討が進められています。常に患者さんの立場に寄り添い、療養生活の質向上を目指して、主体的に看護の専門性が発揮できる方向でありたいと思っています。看護職として、スペシャリストとジェネラリストの双方から、患者さんに満足して頂けるチーム医療へ貢献できるよう、さらに努力してまいります。