琉大病院HOTLINE
第 39 号

平成21年3月16日
発行
附属病院広報委員会

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西巻 正病院長補佐 アンサング・ヒーローを探せ
琉球大学医学部附属病院病院長補佐 西巻 正(にしまき ただし)

アンサングヒーローの証 琉大病院で病院長補佐と第一外科の科長をしています西巻です。私はこれまで本紙に2回登場しています。最初は平成14年に新潟大学から琉大病院の第一外科長として赴任した時、2度目は平成17年に琉大病院の卒後臨床研修センター長を命じられた時です。今回は平成20年の4月に命じられました安全管理対策室長として皆様にご挨拶申し上げます。
 医療は人の命を預かる大変責任の重い業務です。しかし、皆様にご理解いただきたいのは、医療というものは成果を保障することができない不確実な行為だということです。私たち医療者は患者さんの診療に最善を尽くすことは確約できますが、残念ながら100%安全で良好な結果を提供することはできません。
 その一つの理由は人間の生命現象は極めて複雑で、しかも個別的であるためです。つまり、同じような診療行為でも患者さんによって反応が異なり、その結果が確実には予測できないということです。これは患者さん側にある要因といえます。
 医療を不確実にするもう一つの理由は医療者側にある要因です。しかし、これも神ならぬ人間の本質に根ざすもので、1999年に米国医学研究所が公表した報告書の表題にもなった“To error is human”、すなわち“人は誰でも間違いを起こす”というものです。
 私が室長を務める安全管理対策室の仕事は、医療において患者さんの不利益となるような人為的誤りをゼロにできないまでも、そのような誤りが発生しやすい状況を改善して重大な医療事故を未然に防ぐことです。1件の重大な事故の背景には29件の軽度な事故の発生があり、さらに事故には至らなかったもののヒヤリとするような間違いが300件あるという経験上の事実はハインリッヒの法則として知られています。つまり、大きな事故は突然起こるのではなく、多数の小さな事故や間違いが前触れ的に起こっているというわけです。安全管理対策室のスタッフは私の他に2名の専任ゼネラル・リスク・マネージャー(GRM)がいて、絶えず小さな誤りが重なって大きな医療事故に結びつかないように目を凝らしています。
 もちろん、琉大病院の安全をわずか3人の安全管理対策室スタッフで守れるわけではありません。私たち以外にも様々な職種の多くの人が連携をとって幾重にも守りを固めています。その中核となっているのがリスク・マネジャー(RM)とよばれる職員で、患者さんと直接接する部署には必ず配属されています。RMは医師、看護師、薬剤師をはじめとして多様な職種の職員で構成されています。
 縁の下の力持ちはくだけた米国英語で“アンサング・ヒーロー”(unsung hero)、すなわち“歌われることなきヒーロー”というのだそうです。琉大病院で医療の安全管理に携わる職員は皆様に知られることなく、黙々と地味ではあるが重い任務を遂行しているという点でアンサング・ヒーロー達といえるかもしれません。
 そんな琉大病院のアンサング・ヒーロー達の活動を皆様に知ってもらう目的で、このたびGRMとRMを担当している職員にバッジを作製して常時これをつけてもらうことにしました。このバッジの写真をここに載せてもらいました。皆様には是非このバッジを目印に琉大病院のアンサング・ヒーローを探していただきたいと思います。皆様と琉大病院の間の信頼関係を医療の安全という立場で守っている彼らに暖かい声援を送っていただければ幸いに存じます。

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