平成15年1月31日

     University Hospital University of the Ryukyus          

琉大病院 HOTLINE 第23号

琉球大学医学部附属病院の患者様・職員のための情報誌

 

 

医療事故防止のための国立大学病院間の相互チェック

 近年、医療界における安全管理体制への取り組みが強調されておりますが、これに対するリスクマネージメントという手法が取り入れられたのは、1970年代アメリカにおいて医療過誤の危機、医療保険の危機が最初とされております。また、今日の医療事故防止と安全対策に対する意識の向上をもたらした背景として、以下のような要因があげられております。国民の生命と健康に対する価値観の変化と意識の高揚、医療の内容の高度化(高度の手術、検査、処置、副作用のある薬剤の増加等)、患者様側の医療に対する過度の期待、報道機関の影響、患者様と医師・看護師側との信頼関係の変化等であります。ご承知のように、このような医療安全対策に対する急速な認識の高まりから、厚生労働省は平成14年10月から各医療機関が「医療安全対策の基準」を満たすことを保険医療の必須の事項と致しました。
 事故とニアミスのない安全な医療を提供していくことは、医師、看護師、薬剤師、放射線技師、検査技師を含む医療を担う全員の願いであり、我々医療従事者は各自が最大限の危機意識を持ち、細かい注意を払いながら日常診療に当たらなければならないことは言うまでもありません。平成10年3月に出された日本医師会安全対策委員会からの答申では、医療の危機管理の基本理念を「患者様の立場に立ち、患者様が安心して医療を受けられる環境を整えること」としております。我々琉球大学附属病院においても平成12年4月から、院内で発生する事故とニアミス等の事例を医療現場から報告して、改善策を提案していく組織的な体制作りに取り組んでまいりました。さらに平成13年4月から院内措置として「安全管理対策室」を設置し、室長(診療部長医師併任)、副室長(専任リスクマネージャー看護師)、事務職員の3名に加えて各診療部からリスクマネージャー1人を選任して組織の一層の充実をはかりました。この安全管理対策室を中核として医療事故対策委員会、事故調査委員会、分析担当者会議、リスクマネージャー連絡会議を設置して、毎月事例の集計分析を行い改善策を提案しており、附属病院の各診療部の医療現場における安全対策に対する職員各自の認識は著しく向上してきたものと考えております。
 
 さて、平成12年4月に全国国立大学附属病院長会議常置委員会において、全国を5ブロックの地域に分けて相互に乗り入れて調査と提言を行う「医療事故防止のための相互チェック」が提案され、初の試みとして12年秋から開始されました。平成12年度における相互チェックでは、チェック項目等各ブロックの自主性に負うところが多く、チェック項目や結果報告にばらつきがありましたが、平成13年度からは全国統一されたチェック項目により行われて、その結果は「医療事故防止のための相互チェックの総まとめ」としてすでに公表されております。九州ブロックには琉球大学を含めて8つの国立大学附属病院が属し、チェックを受ける病院には、他2大学(チェック担当大学)の病院長、安全管理対策室長、看護部長、薬剤部長、専任リスクマネージャー、中央診療部技師長、医事課長などで構成される10名程度の調査団が訪れ、1日をかけてチェック項目ごとに細かい現場調査を行い、最後に講評および意見交換を行って相互チェックが終了致します。
 これまでに行うことがなかったこのような国立大学附属病院間の相互チェックは、いわゆる外部からの客観的な評価の一環であり、各ブロックの真剣な取り組みにより、各大学附属病院のシステムのチェックや職員の緊張感を持った意識改革に多大の成果を上げ、高い評価を得ており今後も毎年施行される予定であります。
 医療安全対策の確立は我々医療人の未来永劫の命題であります。附属病院の職員の皆様にはこれまでのご苦労に感謝申し上げますとともに、併せて今後の地道なご努力とご協力をよろしくお願い致します。

(病院長 古謝景春)

病院長 古謝景春




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