光学医療診療部長就任のご挨拶

 光学医療診療部とは何をするところなのかご存知でない方が多いのではないでしょうか。しかし、消化管内 視鏡検査部(一般には「胃カメラ」や「大腸カメラ」による検査を行う場所として認識されています)あるい は気管支内視鏡検査部と同じと云えば直ちにご理解頂けるでしょう。そこで、先ずは、平成3年度の京都大学 医学部附属病院に始まり、現在では28国立大学医学部附属病院に設置されている光学医療診療部についてご紹 介致します。従来は開腹手術や開胸手術が必要とされていた病気の治療において、近年、特に内視鏡的治療の分野が急速 に発達し拡大されてきました。従来の外科的手術は生命を救うために不可欠な場合がある反面、患者様の身体 的負担が大きく、臓器を切除することによって機能障害を残すこともあります。一方、内視鏡的治療は、症例 によっては外科的手術と同等の効果が得られるばかりか、患者様の負担が少なく、機能障害が残すことはほと んどないという大きな利点があります。消化器系・呼吸器系の内視鏡検査は、従来は主として診断を目的に行われていました。しかし、近年は、特に消化器系の分野においては、従来外科的手術が行われていた悪性腫瘍や前癌病変に対しても、内視鏡的治療 が積極的に行われ、当院においても症例数が著しく増加しています。内視鏡的治療は、高周波(電気メス)を用いた内視鏡的切除のみならず、レーザー照射や周辺機器の開発・ 進歩により、食道、胃、十二指腸および大腸など消化管の良性腫瘍の治療に限らず、最近では早期癌に対して も積極的に行われ、治療対象が拡大されています。さらに、内視鏡的超音波検査の開発、普及に伴い、癌の深 達度(進行度)診断も急速な発展を遂げ、より適切な内視鏡的治療の適応が得られるようになっています。ま た、消化管のみならず、腹腔、胆道、膵管、気管支など多くの臓器に内視鏡を活用した診療の分野が拡大進歩 しています。すなわち、近年の医療機器の発展と相まってその応用は幅広く、内視鏡検査は単に検査・診断に とどまらず、高周波やレーザー、その他内視鏡的治療用器具を用いて、消化管出血、消化管・胆道狭窄、消化 管悪性腫瘍、消化管内異物などの治療の分野にも広く活用されるようになってきています。近年のわが国における高齢化社会や疾病構造の変化に伴い、また、患者様の生活の質(QOL)の向上の面からも、診断と治療を目的とした内視鏡検査の需要は今後ますます増加することが予想されます。以上のような 情勢のもとでわが国の国立大学医学部附属病院に設置された診療部門が光学医療診療部であります。当院では、内視鏡検査を内視鏡検査室(昭和59年院内措置)で実施し、消化管・胆道・膵管および気管支内 視鏡診断をはじめとし、内視鏡的ポリープ切除術・腫瘍粘膜切除術、内視鏡的止血術など、高周波やレーザー、その他内視鏡的治療用器具を用いた内視鏡的治療も積極的に行ってきました。また、先端の光学医療を目指 して、最新の内視鏡機器、レーザー発生装置、超音波内視鏡、画像ファイリングシステム、内視鏡専用X線装 置などの拡充と設置に努力し、主に消化器系、胆道・膵管系、気管支系の分野の診療と臨床研究において高い 実績を挙げてきました。一方、当院における内視鏡検査に伴う診断と治療を主体とする診療や教育、研究は現在も第一内科と第一外 科、第二外科が各診療科ごとに行われています。すなわち、患者を中心とした、しかも病気の的確な診断と治 療に直結した診療を確立させるためには、現在の診療体制では限界があります。さらに、本県を含めわが国に おける内視鏡を用いた診療の著しい増加に伴い、内視鏡的診断法や治療法における開発と研究の必要性もます ます高まっています。そこで、中央化した新しい光学医療診療部の設立と専任教官を配置することによって、これまで各科でそれぞれ個別的に行っていた診療、学生教育および卒後教育・研修を一貫して行い、各科等の有している知識や技 術が分散せずに、より能率的で高度な診療・教育を行うことが可能となります。さらには、内視鏡に関連した 医療技術の開発や研究を行いつつ、日進月歩の医学の進歩に遅れがちな実地医家のためにも門戸を広く開放し 、数多くの優れた技術や知識を持った内視鏡専門医師の養成を行うことにより、本学はもとよりこの分野における沖縄全体の診療レベルを大幅にアップさせることが可能となります。以上のような主旨に基づいて、平成13年度の概算要求で、当院にも国立大学附属病院としては21番目の光 学医療診療部が認可され設置されました。そして、平成14年1月1日付けで、日本消化器内視鏡学会の専門医 ・指導医である金城福則が部長に就任致しました。今年4月からは、内視鏡検査室も増改築され、設備も拡充され光学医療診療部として稼動致しております。しかし、専任スタッフの不足や回復室を含めた検査室の狭さ、十分とは云えない稼動率など病院全体として検討して頂きたい問題も少なくはありません。今後は、光学医療診療部の開設理念に基づき、新しい治療法の開発・研究を行いつつ診療レベルの向上をはかり、癌やその他の病気の早期発見と治療による患者様のQOLの向上に努め、地域社会の発展に貢献できますことを願っております。皆様のご理解とご協力を宜しくお願い申し上げます。

(光学医療診療部長 金城福則)


光学医療診療部長 金城福則


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