高知医科大学周産母子センターの活動
当院の周産母子センター開設を記念し、研修医オリエンテーションの特別講演として5月11日に高知医科
大学附属病院長・副学長の相良祐輔先生から「高知医科大学周産母子センターの活動一特に地域周産期医療支
援ネットワークの開発」のテーマで講演していただきました。その内容の概略を報告いたします。
講演の導入で、昭和30年代の岡山大学産婦人科教室時代の話しをされました。母体にブドウ糖を投与する
ことにより、母体と胎児の治療が直結することの発見とそれにつづいて子宮内胎児発育遅延に対するマルトー
ス輸液療法の開発の話がありました。 ひとつの事実から生理学、生化学の知識を動員し胎児治療の開発にま
でつなげた話は、医学者、臨床医の理想的な態度を示したものであり、多くの若い研修医に感銘を与えたもの
と思います。
相良先生は、胎児期と新生児期の連続した治療の必要性に早い時期から気づき、従来の産科学や新生児医学
ではない周産期医学の必要性を提唱されました。その歴史的な背景と周産期医学会の設立や、全国分娩部部長
会議の発足の話をされました。その活動は、現在の周産母子総合医療センターの設置が全国に展開する厚生省
の施策につながりました。
高知医科大学周産母子センターの現状を示し、地域社会の変化、ニーズに対応した医療の必要性を説かれま
した。
児の救命には母体搬送が重要であることを説明し、新生児搬送から母体搬送への移行について述べられまし
た。さらに、搬送時期の遅い母体搬送例が多いことから、一般の開業医や病院から正しい時期の母体搬送が行
われるよう、コンピューターのソフト作りに着手し、数年かけて周産期医療支援ネットワークシステムを作ら
れました。システムの必要性、ソフト開発、実際の運用の話は、医療の現場でなにが必要とされているかを考
えること、必要なことにいかに取り組むかを示され、深く感銘を受けました。
琉大病院に周産母子センターが開設されたことに祝辞と感概を述べられました。また、研修医に対し、産科
医でもなく新生児専門医でもない新しい周産期専門医perinatologistが多く輩出するよう期待
を述べられました。相良祐輔先生の名調子の講演は、研修医を引きつけ、これからの臨床研修に大いに刺激と
なり、役立つものと確信いたしました。
周産母子センター副部長 佐久本 薫 |