ラオス国セタティラ−ト病院の改善プロジェクトを全面支援

 国際協力事業団(JICA)の企画する事業として、琉球大学医学部では1992年10月よりラオス国において公衆衛生プロジェクトを実施してきました。

 このプロジェクトでは、ラオス国カムワン県をモデル地域とし、公衆衛生の改善活動、ポリオなどの予防接
種、デング熱、マラリアといった感染症対策を活動内容として、琉球大学からの専門家の派遣やラオス国からの研修員の受け入れを行ってきました。この公衆衛生プロジェクトは本年、1998年に完了致しましたが、琉球大学医学部が達成した実績は高い評価を受け、新たな技術援助プロジェクトとしてラオス国ビエンチャン市にありますセタティラート病院の改善プロジェクトが明年、1999年秋より始まることになりました。これまでの公衆衛生プロジェクトでは、主に基礎医学系の分野での技術協力でしたが、この病院改善プロジェクトでは医療の前線、患者の診断と治療ということが活動内容となります。その意味では、医学部附属病院の力量が問われるプロジェクトといえましょう。

 セタティーラート病院改善プロジェクトの準備は、既に公衆衛生プロジェクトの評価の段階(1997年)から進められてきました。茨木教授(整形外科)を団長とする調査団が1997年3月、新築されるセタティラート病院の移転先を調査しております。1997年8月には平山前学部長を団長として最初の事前調査団が派遣され、プロジェクトを進めていく覚え書が交換されました。次いで1998年には私と草野助教授(第1外科)が短期調査団として派遣され、プロジェクトの計画概要をまとめました。

 このセタティラート病院改善プロジェクトの特徴は、技術協力と並び、わが国の無償資金協力で新しい病院を建設することです。この無償資金協力の実施にあたり既に1998年の夏と秋、太田教授(小児科;基本設計調査)、佐久本講師(産科婦人科;基本設計概要説明)が計画立案で派遣されました。さらに、12月13日からは最終的な合意を両国で結ぶべく、柊山学部長を団長とする実施協議調査団が派遣される計画です。このようにセタティラート病院改善プロジェクトは周到な準備と調査を繰り返し、いよいよ1999年秋より始まる計画であります。

 現在のセタティラート病院は、1956年、実に40年以上前に、アメリカ、フィリピンの資金援助で建設された木造平屋建てで、施設も設備も老朽化が進み、わが国の医療常識ではとても考えられないほどの劣悪な状況です。しかし、このセタティラート病院は、ラオス3大病院のひとつとして位置付けられた総合病院で、患者数は国内で2番目に多い医療施設です(入院110〜120人、ベット数200床、外来180〜200人)。

 ビエンチャン市の約53万人をカバーし、近隣の住民にも中核的な病院として高い評価を受けています。また医科大学生への臨床教育や医師への卒後研修の場にもなっています。何度か訪問して、この病院は市民から最も信頼され、愛されている病院であることが実感されました。このプロジェクトでは、琉球大学からの技術協力で、ひとつの新しい総合病院を機能させることが目的です。

 単に診断や治療の技術を改善するのみならず、病院の経営や管理、看護、研修体制、薬剤管理、栄養管理など病院のもつすべての知識と技術を必要としています。講座の枠を超え、職種を超え、附属病院職員の皆様の絶大なる援助と協力が必要となると思います。特に研修員の受け入れ先、専門家の派遣では附属病院の責任において対応することになると思います。
 宜しく御協力の程、お願い申し上げます。

  


(西暦2000年に完成予定の新セタティラ−ト病院)


(中央検査部 教授 山根 誠久)   



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