緊急輸血マニュアル(平成15年9月24日)


緊急に赤血球の輸血が必要となった場合には,直ちに患者の輸血検査用血液を採取するともに,その状況に応じて以下のように対応する。
診療科用
検査技師用
マニュアル   フローチャート
マニュアル   フローチャート

 

【 緊急輸血の対応 】 
 

1.患者の血液型検査を行う余裕がなく,直ちに輸血を開始する場合
     “O型赤血球製剤を交差適合試験を行わずに輸血する”。赤血球製剤がO型であることを確認する。

     ただし,できるだけ速やかに患者の血液型検査を行い,輸血する血球製剤をO型から患者血液型と同型の製剤に切り替える。
     

    2.輸血を開始するまで10〜20分間程度待てる場合

    “血球製剤が患者血液型と同型であることを確認し,交差適合試験なしに輸血する”。

    1)患者の血液型が, 病院システムに登録されていない場合
      患者の血液型検査を担当医師と臨床検査技師 (輸血部あるいは検査部) が各々の部署 において実施し,血液型検査の結果をダブルチェックする。
    2)患者の血液型が, 既に病院システムに登録されている場合
      臨床検査技師 (輸血部あるいは検査部) のみが血液型検査を行い,患者と同型の血球製剤を,交差適合試験を行わずに使用する。

       
    3.輸血を開始するまで20〜30分間程度待てる場合

     “患者の血液型をダブルチェックした後,患者と同型の血球製剤を生理食塩水法による交差適合試験を行って使用する”。
     

    4.輸血を開始するまで30分間以上待てる場合

     “患者の血液型をダブルチェックした後,患者と同型の血球製剤を生理食塩水法とクームス法による交差適合試験を行って使用する”。
     

    5.Rh0 (D) 陰性の場合

     Rh0 (D) 検査の結果,“陰性”と判明した場合には,血液センターにRh0 (D) 陰性の血液製剤を発注し,できるだけ速やかにRh0 (D) 陰性の血球製剤に切り替える(特に患者が女児もしくは妊娠可能な女性の場合)。
     

    6.血漿製剤(新鮮凍結血漿,濃厚血小板)の輸血

     これらの血漿製剤については交差適合試験を行う必要がない。患者と同型の血漿製剤を輸血するが,患者の血液型が判明していない場合にはAB型の血漿製剤を輸血する。
     

    7.準備できる血球製剤の量について

     "30分間以内-緊急輸血の対応_-"で輸血部(検査部)が行える検査は,患者の血液型検査,生理食塩水法による交差適合試験であり, 最大5バック(400_×5 = 2,000_)です。なお輸血予定の血液型の備蓄製剤が, 輸血したい量に足りない場合もありますので,輸血予定量は早めに連絡下さい
     

    8.同意と記録

     緊急に輸血が必要となり,やむを得ずO型血球製剤やAB型血漿製剤を使用する場合,あるいは交差適合試験を行わず,Rh0 (D) 陰性患者にRh0 (D) 陽性の血球製剤を輸血する可能性がある場合には,担当医師はその事由を患者またはその家族にあらかじめ充分説明したうえ,同意を得る。またその経過を診療録に正確に記録する。
     

    7.使用後の血球製剤の保存

     交差適合試験を行わないで血球製剤を輸血した場合には,輸血前の患者血液検体と使用済みの血球製剤バックを輸血部へ返却する(事後検査のため)。
     
     

緊急輸血の検査内容と潜在的副反応
待ち時間と
輸血の対応
患者の血液型
検 査
製剤の血

検 査

交差適合試験
潜在的副反応
ベッドサイド
輸血部
検査部
生食法
クームス法
10分未満 O型血球
輸 血
×
×
×
×
抗A,抗B抗体
不規則抗体による溶血
10〜20分 同型血球
未交差輸血
登録なければ
実 施
×
×
不規則抗体による溶血
20〜30分 同型血球
交差適合輸血
登録なければ 実 施
×
×
不規則抗体による溶血
30分以上 同型血球
交差適合輸血
登録なければ 実 施
×
不規則抗体による溶血は極めて少ない
                           不明な点がありましたら,輸血部(内線3355)へお問い合わせ下さい。            
                  

緊急輸血時における検査業務の対応

 

 1. 交差適合試験を必要とする製剤

    1. 照射濃厚赤血球MAP(400ml)・・・・備蓄製剤

    2. 照射濃厚赤血球MAP(200ml)・・・・特殊製剤

    3. 照射人全血・・・・・・・・・・・・・特殊製剤

    4. 不規則抗体適合血(照射MAP) ・・・特殊製剤

    5. 照射白血球除去赤血球・・・・・・・・特殊製剤

    6. 照射洗浄赤血球・・・・・・・・・・・特殊製剤

    7. Rh陰性照射濃厚赤血球MAP・・・・・特殊製剤

    8. 自己血 ・・・・・・・・・・・・・・備蓄製剤・・輸血部技師を呼び出す

 

 2. 血液型が既に確認され,登録済みであることを前提として,特に交差適合試験が省略されている製剤

1. 新鮮凍結血漿(FFP)・・・・・・・・備蓄製剤

2. 照射濃厚血小板・・・・・・・・・・・特殊製剤

3. 照射濃厚血小板HLA ・・・・・・・・特殊製剤

4. Rh陰性新鮮凍結血漿 ・・・・・・・・特殊製剤
 
 

 3. 交差適合試験以外に放射線照射,感染症マーカーの検査が必要な製剤

1. 院内採血による製剤・・・・・・・・・特殊製剤・・輸血部技師を呼び出す

 4.  製剤の発注の方法

1. 備蓄製剤・・・・・輸血部,検査部技師が在庫状況を確認し,その都度発注

2. 特殊製剤・・・・・必要に応じて各診療科から発注




 

 1. O型血球製剤の払い出し

1)O型血球製剤は,血液型検査を終了するまで待てない緊急時に,診療側からその旨の要求があった場合に払い出す。

2)O型血球製剤の払い出しは,1)の状況に限って電話連絡でも受け付ける。

3)払い出しの条件として,輸血血液請求伝票を直接持参するか,あるいはエアーシューターで提出されることを原則とする。

4)予め診療側に患者検体の提出を要請する(1頁,注意事項3参照)。

5)払い出し前の出庫処理として,輸血システムの緊急処理画面で患者属性の入力,製剤のバーコードの読みとりを行う。但し,患者属性が判明していない場合には患者属性の入力を省略することも可とし,確認された時点で改めて入力する。

6)O型血球製剤の払い出しで最小限必要とする入力事項は,血液型(O型),製剤種(MAP),製剤番号,採血日,有効日である。出力される帳票は,照合票,交差試験ワークシートである。

7)交差試験報告書(輸血血液請求伝票)を出力する。

8)製剤の血液型を確認するために,セグメントチューブを1本確保し,製剤番号のシールを貼り付ける。

9)血液製剤は照合票を貼付して払い出す。この時点まで輸血血液請求伝票の提出がない場合,受け取りに来た職員の氏名(名札を確認),使用場所を記録した上で請求伝票の提出を申し伝える。

10)O型製剤の払い出し後は,速やかに製剤の血液型確認試験(オモテのみ)を行なう。O型以外の製剤が含まれている場合は,直ちに担当医師に連絡し,その製剤の輸血を中止させる。

11)患者の血液型が病院システムに登録されているかを確認する。未だ登録されていない場合は診療側に輸血検査依頼伝票の提出を要請し,血液型検査(オモテ,ウラ)を行なう。

12)血液型検査の結果を報告し,病院システムへの登録を行う。

13)追加輸血があるかを確認する。

14)O型製剤の輸血のみで終了した場合は,伝票類の入力漏れ,入力ミスの有無,全業務のプロセス(手順,報告等)を確認する。
 
 

 2. 血液型検査のみによる同型血球製剤の払い出し

1)血液型検査のみによる同型血球製剤の輸血は,交差適合試験(生食法)が終了するまで待てない緊急時に実施される。

2)血液型検査のみによる払い出しは,診療側からの輸血血液請求伝票と患者検体の提出により受付ける。

3)患者の血液型の登録を病院システムで確認し,交差適合試験用に提出された検体で血液型検査(オモテ,ウラ)を行う。登録されていない場合には担当医にもベッサイドでの血液型検査(オモテ)を要請する。

4)血液型検査のみによる払い出しは,患者の血液型検査がダブルチェックされることを原則とする。

5)検査部,輸血部による血液型検査の結果と登録された血液型または担当医の検査結果と一致しているかを確認する。未登録の場合は病院システムへ登録する。

6) 製剤の血液型を確認するために,セグメントチューブを1本確保し,製剤番号のシールを貼り付ける。

7)輸血システムの緊急処理画面で患者属性,製剤のバーコードを入力し,出庫処理及び帳票を出力する。

8)必要とする入力事項は,患者属性,患者の血液型と製剤の血液型,製剤種(MAP),製剤番号,採血日,有効日である。一連の操作により出力される帳票には,照合票,交差試験ワークシートがある。

9)交差試験報告書(輸血血液請求伝票)を出力し,伝票の報告コメント欄に朱色のペンで“血液型検査にて払い出し”という旨のコメントを記載する。

10) 照合票を製剤に貼付し,診療側へ払い出す。

11)同型製剤を血液型検査のみで払い出した後は,速やかに交差適合試験を開始する。交差適合試験(生食法,クームス法)で凝集または溶血等の反応が確認された場合には,直ちに担当医師に連絡し,その製剤の輸血を中止させる。

12)交差適合試験の全過程が終了した場合は,全業務のプロセス(手順,報告等)と伝票類の入力漏れ,入力ミスの有無等を確認する。
 
 

 3. 交差適合血(生食法)での払い出し

1) 輸血の開始まで20〜30分間以上の検査時間がある場合は,生食法での交差適合試験を行い,交差適合血を払い出す。

2)交差適合血(生食法)の払い出しは,診療側からの輸血血液請求伝票と患者検体の提出により受付ける。

3)患者の血液型の登録を病院システムで確認し,交差適合試験用に提出された検体で血液型検査(オモテ,ウラ)を行う。登録されていない場合には担当医にもベッサイドでの血液型検査(オモテ)を要請する。

4)検査部・輸血部による血液型検査の結果と病院システムの登録情報または担当医が行った結果が一致しているかを確認する。登録されていない場合は病院システムへ登録する。

5)払い出し前の出庫処理として,輸血システムの緊急処理画面で患者属性の入力,製剤のバーコードの読みとりを行う。

6)必要とする入力事項は,患者属性,患者の血液型,製剤の血液型,製剤種(MAP),製剤番号,採血日,有効日である。出力される帳票は,照合票,交差試験ワークシートである。

7)同型血球製剤の交差適合試験を生食法で行う。

8)交差試験報告書(輸血血液請求伝票)を出力し,生食法の結果を記載する。また伝票の報告コメント欄には朱色のペンで“生食法にて払い出し”という旨のコメントを記載する。

9)照合票を製剤に貼付し,交差適合血(生食法)を診療側へ払い出す。

10)交差適合試験はクームス法まで引き続き行う。クームス法で凝集または溶血等の反応が確認された場合には,直ちに担当医師に連絡し,その製剤の輸血を中止してもらう。

11)交差適合試験の全過程が問題無く終了した場合は,全業務のプロセス(手順,報告等)と伝票類の入力漏れ,入力ミスの有無等を確認する。
 
 

 4. 交差適合血(クームス法)での払い出し

1)輸血の開始まで30分間以上の検査時間がある場合は,交差適合試験をクームス法まで行い,交差適合血を払い出す。

2)交差適合血の払い出しは,診療側からの輸血血液請求伝票と患者検体の提出により受付ける。

3)患者の血液型を病院システムで確認する。既に登録されている場合は,交差適合試験用に提出された検体で血液型検査(オモテ,ウラ)を行う。未だ登録されていない場合は輸血検査依頼伝票の提出を依頼し,検査部・輸血部での血液型検査に加え,担当医にベッサイドでの血液型検査(オモテ)を要請する。

4)検査部・輸血部による血液型検査の結果と病院システムの登録情報または担当医が行った結果が一致しているかを確認する。未登録の場合は病院システムへ登録する。

5)交差適合試験は最終工程のクームス法まで行う。

6)輸血システムの緊急処理画面で患者属性,製剤のバーコードを入力し,出庫処理及び帳票を出力する。

7)必要とする入力事項は,患者属性,患者の血液型,製剤の血液型,製剤種(MAP),製剤番号,採血日,有効日である。出力される帳票は,照合票,交差試験ワークシートである。

8)交差試験ワークシートにクームス法までの交差試験の結果を記載する。

9)交差試験報告書(輸血血液請求伝票)を出力し,交差試験による最終判定の結果(適または不適)を選択する。

10)照合票を製剤に貼付し,交差適合血を診療側へ払い出す。

11)交差適合試験の全過程が問題無く終了した場合は,全業務のプロセス(手順,報告等)と伝票類の入力漏れ,入力ミスの有無等を確認する。
 
 

 [ 注 意 事 項 ]

1. 大量輸血,または極めて緊急を要する輸血検査依頼で,当直者のみでは対応が困難と判断された場合,速やかに輸血部,検査部技師に応援を求める。
2. 院内採血による輸血検査の依頼があった場合,速やかに輸血部職員を呼び出す。

3. 血液型を確認せずにO型血球製剤を緊急輸血する場合,血液型及び交差適合試験用の検体を輸血前に予め確保しておく。O型血球製剤を輸血した後に採血された検体では,血液型(オモテ試験),交差適合試験(副試験)の判定が困難であるため,輸血部技師を呼び出して判定してもらう。

4. 患者のRho (D) 式血液型が陰性と判明した場合には,血液センターにRho (D) 陰性の血球製剤を発注し,速やかにRho (D) 陰性の血球製剤に切り替える。

5. 交差適合試験が不適合となった場合,直ちに担当医師へ輸血中止の連絡を行い,その後輸血部技師にも連絡する。適合血が見つかるまで輸血が待てない場合は,医師の判断により交差不適合製剤を払い出すことは可能である。その際,凝集反応が弱い製剤から先に払い出す。

6. 輸血部技師は事後の確認検査として,患者の血液型検査と間接クームス試験を実施する。


 

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